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新型コロナウイルスによる影響を受け、企業は経営戦略の見直しが迫られている。世界を代表するコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー陣に緊急寄稿してもらう本連載。最終回となる第10回では、「レジリエンス(再起力)」をテーマにする。グローバル企業エクゼクティブの実に6割以上は、経済がコロナ危機前の水準に戻る時期を「2022年以降になる」と予測している。それでは、いま企業はどのように経営を行い、この困難に立ち向かえばよいのか。金融危機時からの分析を基に、レジリエンス(再起力)の高い企業が持つ、5つの条件を明かす。

危機時から飛躍する企業に共通する点

 新型コロナウイルス感染症の影響が今後、どの程度継続するかについては依然不確実性が高い。

 マッキンゼーがグローバル企業のエグゼクティブ約2000人に対して実施している調査によれば、実に回答者の6割以上が、経済が新型コロナ危機以前の水準に戻るのは「2022年以降になる」と予想し、それを前提に自社の戦略やオペレーション計画を策定している。一方で、残りの回答者は「2021年末までには回復する」と考えている。

 また、マッキンゼーとオックスフォードエコノミクス社の共同分析によれば、今回の危機による米国経済への負のインパクトは、リーマンショックを大きく上回って第2次世界大戦以降、最大規模となる見込みであり、日本経済についても同様の分析結果となっている。

 新型コロナ危機がヒトに与えた影響という観点でいえば、消費者の行動や働き方、デジタライゼーションの浸透・進化といった点においてグローバルレベルで大きな変化が起きた。

 例えば、銀行、食料品、エンタテイメントなどの業界では、デジタルユーザーが消費に占める割合が危機前と比べて1.5倍から最大2倍にまで増加している。

 その満足度も86%と極めて高く、新規ユーザーの75%が今後もデジタルチャネルを継続的に使用する意向を示している。

 テレワークについても、業界によっては7割を超える企業で導入され、一部のネット企業では希望する社員に対しては、永久的に自宅勤務を許可するところも出てきている。

 逆に、デジタルチャネルでの購買が活発化したことにより、物理的なサプライチェーンやロジスティクスの脆弱性が顕在化するという事象も観察されている。

 このようなパラダイムシフトが急速に進み、将来の見通しについても不確実性が継続する中、企業はどのようなアクションをとることで今後の成長を実現すべきだろうか。

 本連載の第1回でも簡単に触れたが、過去の危機時の分析からは、その後の業績が他社よりも優れていた一定群の企業が各業界において特定されている。これらの企業をレジリエンス(再起力)の高い企業「レジリエント企業」としよう。

 世界金融危機前にあたる、2007年の株主総利回り(TSR)を100とした場合、その後の推移を見たのが、次の図だ。

 危機直後の収斂期ともいえる2009年時点のTSRは、レジリエント企業が102、非レジリエント企業が76と、34%のギャップがあった。それが回復期にあたる2011年には、99%のギャップに広がり、その後も差が縮まることはなかった。

 2017年になると、レジリエント企業が当初より、3倍近い成長を果たすにまで至った。つまり、収斂期と回復期の取り組みが、その後の業績に極めて大きな差を生むと示している。

 これらレジリエント企業における共通項が何かを調査すると、次の4つのアクションを迅速かつ的確に実行していたことが判明した。

(1)危機の早い段階から生産性向上に取り組み、COGS(売上原価)を中心に機動的なコスト削減を実施

(2)危機最中には一時的にCAPEX等の投資を抑制するも、回復期にはいち早く投資を復活

(3)(チャネル開拓を含む)新規事業構築や新テクノロジーへの成長投資を加速

(4)危機最中には戦略的に事業や資産の売却を行い、回復期には買収を通じて事業ポートフォリオを再構築

 新型コロナウイルスの感染が一定の落ち着きを見せ始めているいま、特に今後重要となってくるのは、(3)と(4)の成長投資の加速と事業ポートフォリオの見直しであろう。

 Fortune 500に名を連ねる企業の多くが不況期に生まれたといわれているように、危機は機会を生む。今回の新型コロナ危機を通じて、多くの不便や不安が生まれているのだから、その分、新しいビジネスのアイデアは豊富である。

 逆にこれは、顧客行動や生活様式に大きな変化が起きることにより、大企業の既存の事業モデルやオペレーションが急速に陳腐化することも意味している。危機以前に検討してきた成長戦略や施策のパイプラインを、危機に照らして可及的速やかに見直すことが必須となってくる。

 また、危機時は大企業やスタートアップなどから優秀な人材が市場に出てくるなど、人材採用面でも大きなチャンスが生まれている。