求めるレベル下げずに共感を示す

「どちらを犠牲にすればよいのか」と、ロビンは筆者に聞いた。「うちの商品を必要としている顧客か、家族の面倒という難しい制約を抱えるトップリーダーの一人か」

 ロビンの漠然とした不安と対立回避指向が、間違った二元的思考をもたらし、間違った問題設定をもたらしていた。彼女が問うべきは、「重要なリーダーが成功できるように、私にはどんなサポートができるか」である。

 究極的には、彼女は共感することと、期待値を下げることを混同していた。自分の行動がアニルに「申し訳ないと思わせる」のではないかという不安は、共感ではなく、臆病である。従業員のもがきを気遣っていることは、その困難に対する理解を示すとともに、彼らの成功を助けるための努力を倍増させることで示すことができる。

 このような会話をいまやるなら、ビデオ電話を利用するのが最良であろう。そうすれば、お互いの声のトーンや表情を読むことができる。

 ディスカッションでは、この行動が部下にとっても新しい経験であること、そして、彼らがすでに、自分がもがいていることを申し訳なく思っている可能性が高いことを覚えておこう。

 基本的には、「相手の様子を聞く」前に「コンタクトをとる」こと。近況を尋ね、相手のウェルビーイングを推し測ろう。また、そのディスカッションの目的は、目の前にある問題の解決を支援することだと明確にしよう。

 まず、「どうしてこういうことになったと思うか」など、相手の考えを聞く質問を投げかけてみよう。そして、相手の状況分析に慎重に耳を傾けよう。

 相手が問題の存在そのものを否定するなら、あなたは間違った人に、間違った期待をかけていたのかもしれない。誰かを非難したり、何度も言い訳をしたり、責任を取ることを拒否するなら、あなたは間違った人をそのポジションにつけたのかもしれない。

 ようやくアニルと直接話をしたロビンは、真の問題は、会社のフィルメント・プロセスにあることを知った。

 ロビンの会社のデータシステムは、いまもスプレッドシートや物理的な文書の手渡しなど、手作業でまとめられていた。リモートワークになる前、アニルのチームは重要情報を持って、いくつものビルがある会社の敷地内を走り回っていたのだ。

 いまではそれが、膨大なテキストメッセージやスラックやメールになった。そのすべてを把握することは、アニルにも不可能だった。

 ロビンはこのディスカッションから、危機になっても、スタッフには危機前と同じレベルの結果を求められていることに気がついた。そのやり方を変える必要があるのかもしれない。アニルがその方法を見つける支援をするのは、リーダーであるロビンの仕事である。