新型コロナウイルス感染症は、大小さまざまな国で、真のリーダーは誰かを教えてくれる。いまのところ最も人気が高いのは、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相。彼女のアプローチは大きな成果を挙げているようだ。しかし、ここではギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相のほうが好例かもしれない。

 ニュージーランドと違って、ギリシャは構造的な問題に苦しめられている。人口の高齢化が進み、社会制度は弱く、公務員は非効率的で、国民皆保険制度は資源不足に陥っている。さらに、今回のパンデミックに襲われたとき、ギリシャは史上最も長くて、最も深刻な不況から抜け出そうとしていた。

 それでもギリシャは、世界で最も効果的な対応を行っている国の一つだ。本稿執筆時点で、人口約1100万のうち、新型コロナウイルス感染症による死者はわずか148人である。

 ミツォタキス首相は国民に警戒を呼びかけ続けているが、パニックは招いていない。悪名高いほど独立心の強いギリシャ人を説得して、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の徹底や営業自粛など、ウイルスの封じ込めに必要な措置を、驚くようなレベルで遵守させている。

 さらに素晴らしいことに、安定した国家運営で国民の信頼を得ているミツォタキスは、危機を利用して、記録的な速さで巨大な官僚制度をデジタル化し、合理化している。観光業に大きく依存している国にとって、厳しい困難が待ち受けていることは確かだが、ミツォタキスの功績には目を見張るものがある。

 危機が収束に向かい始めると、改革の必要性が薄れ、緊急性と勢いだけでは惰性を克服できなくなるだろう。リーダーの指導力はまたしても、自分が統括する市民インフラより軽視される。

 この事実は、パンデミックを本当にうまくマネジメントできたのは誰かを考えるヒントになる。つまり、パンデミックを乗り切っただけでなく、国を改革する機会を捉えて、「コロナ前」より強力なインフラを導入できる人だ。

 国や企業は、自分たちのリーダーがパンデミックを乗り越えるだけでなく、危機を利用して持続的な変化をもたらすことを期待しているはずだ。


HBR.org原文:Good Leaders Can Overcome Institutional Inertia in a Crisis, May 18, 2020.


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