●データ・コラボレーティブを促進する

 データ・コラボレーティブは、官民パートナーシップの形態として発展しつつあり、価値の共有と共創を可能にするものだ。

 企業と、学術研究グループや市民社会組織との非公式で時限的な協働などが例であり、通常は匿名化データを、特定の目的で再利用できるようにする。現在、データ・コラボレーティブの事例は世界各地に複数あり、その可能性とリスクの一部が明らかになってきた。

 取り組みには多くの形態がある。「公開インターフェース」では、企業が特定のデータ資産への自由なアクセス権を与え、外部の組織による独自のデータ活用を可能にする。

「信頼できる仲介者」は、民間セクターのデータ提供者と、公共セクターや市民社会や学界のデータ利用者との協働を、第三者が支援する場合を指す。

「データプーリング」では、企業と他のデータ保有者との合意により、データセットの統合提示システムが構築され、複数の関係当事者によるアクセスが可能になる。

 どのモデルも有望だが、注意すべき点もある。データの共有によって、プライバシーを含めた個人の権利を脅かしてはならない。共有のメリットを促進するには信頼の構築が不可欠だ。したがって、強いプライバシー保護(匿名化や集約化など)をデータ・コラボレーティブの枠組みとガバナンスに組み込むことが必須となる。

 ●データスチュワードを指定し育成する

 データ・コラボレーティブの台頭によって、組織内で求められる新たな人的(および制度的)役割も明らかになった。

 データスチュワードとは、組織やセクター全体でのデータ共有を積極的に主導、促進、調整する任務を負う個人やチームを指す。その目標は、データ資産に宿る私企業にとっての金銭的価値と、公共的価値の両方を最大化することだ。その意味でデータスチュワードは、企業のレンブラント絵画を扱う学芸員とも見なせる。

 データスチュワードは任務の一環として、十分に活用されておらず潜在価値を持ちうるデータの発掘、その価値を解き放つためのパートナーシップの特定と促進、データ共有のメリットと潜在的リスクを踏まえた責任ある枠組みの確保、などに取り組むとよい。

 企業でこうした役割が導入されるケースは増えており、CFO(最高財務責任者)やCIO(最高情報責任者)と同程度にデータスチュワードが一般的となる日は、そう遠くないかもしれない。

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 全世界の組織で生成・蓄積されるデータの量は、毎日2.5エクサバイト(250京バイト)超ずつ増えているという。現在の状況下では、これらのデータの大半は最終的に忘れられるか無視され、「情報のトワイライトゾーン」――データは存在するが使われない空間――に消えゆくことになるだろう。

 だが、これまで述べてきたように、その忘れられたデータには膨大な価値がある。その価値を引き出すには共有こそが決定的に重要な手段であることを、私たちは知っている。また、いつどのように共有すれば最も効果的なのかについて理解を深めるために、さらなる研究が必要であることも明白だ。

 そして何より、もっと創造的で革新的なマインドが求められる。組織が隠れたレンブラントのクモの巣を払い落とし、みずからの利益の最大化と社会全体への貢献に向けて保有済みの資産を再利用するうえで、それこそが最も必要なものなのだ。


HBR.org原文:Unlock the Hidden Value of Your Data, May 15, 2020.


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