●データの価値を測る方法論を確立する

 データの潜在価値を十分に引き出すには、ステークホルダーが「価値とは何を意味するのか」について、もっと理解を深める必要がある。データは有益であるという点では広く見解が一致しているものの、その価値の算出方法となると、それほどのコンセンサスを得ているものがない。

 重要な検討事項の一つは、どの変数や指数を使うかを決めることである。データには金銭的な価値がありうる一方、ベネット公共政策研究所が先頃の報告で言及したように、「社会福祉」としての価値もあるかもしれない。つまり、データの共有は「社会全体の幸福」に寄与しうるわけだ。

 社会的および金銭的という2つの価値形態は、時にデリケートなバランスの上に成り立つ。企業はデータの再利用によって、広く社会福祉に貢献しながら、自社の金銭的利益はある程度放棄(または機会費用を負担)することになるかもしれない。

 政策立案者と社会全体は、こうした難しい判断に指針を設けるために、より広範な価値評価指標を見出す必要がある。そして、さまざまな指標がどのように相互作用し、時に相反するのかを考慮しなければならない。

 たとえば、公衆衛生局や統計局はどんな場合に、民間企業のデータ(例:移動データ)に優先的または自由にアクセスすべきか、そして企業側はそのデータへのアクセスに対し、市場価格を要求するのが正当となるのはどんな場合かについて、指針が必要だ。

 社会的価値と金銭的価値の他にも検討すべき指標としては、データの公開や共有によって生じうる潜在的な害や、データの再利用を「しない」場合の機会費用――たとえば災害時に、特定のデータを共有しなければ人命を救えない可能性――などがある。

 こうした指標はすべて、デリケートなバランスの上に共存する。それらを合わせて検討すれば、組織がデータの真価を見極めるうえで役立つのだ。

 ●協働を動機づける枠組みを確立する

 物的資産とは違い、データ財は非競合的で無形だ。これはつまり、元の保有者のメリットを毀損せずに共有が可能であることを意味する。したがって、活用不十分なデータ資産を最大限に活かすプロセスではしばしば、新たなインサイトと機会の創出のために、異なるステークホルダーたちが協働することになる。

 たとえば、ソーシャルメディアのプラットフォームが保有する消費者の移動傾向のデータは、市民社会組織によって、病気のまん延やパンデミックを追跡するために再利用されるかもしれない。こうした協働は、マリアナ・マッツカートが言う価値の「共創(co-creation)」に当てはまる(状況はやや異なるが)。

 しかし、こうした共創を促進するには、囲い込みと価値の抜き取りに重きを置く現在のデータ所有権のあり方を超越できるような、制度と枠組みが必要だ。筆者は各所で「データ・コラボレーティブ」の多用を提唱してきたが、これはデータ再利用のための実用的なアクセスを円滑化できる方法だ(この用語については、さらに後述する)。

 加えて、データ共有のためには、データ管理と再利用環境についても新しい形が求められる。特に共有の契約と使用許諾の規定は、新たなものを用いるべきだ。

 データへのアクセス拡大を提唱する人は総じて、オープンソース・ソフトウェアのムーブメントを手本にすれば得るものがあるだろう。オープンソース化の動きは、協働と相互学習の精神を促進することを目指し、斬新な規定と法的文書にもとづく堅牢なビジネスモデルを生んできたからだ。