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新型コロナウイルスによる影響を受け、企業は経営戦略の見直しが迫られている。世界を代表するコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー陣に緊急寄稿してもらう本連載第7回では、「エコシステム」をテーマにする。消費者の行動のみならず社会に大きな変化が起きている。2020年5月末時点での消費者の意識調査から、6つの新潮流を明らかにし、次に来る社会システムを提示する。今後の舵取りにかかせないのが、新たなエコシステム構築への視座だ。

「先行きの見通しが立たない」、変わる消費者の意識とその行動

 国内において、新型コロナウイルス感染症の蔓延から4カ月弱が経った。2020年5月末時点で、当ファームが行った消費者調査からは、その動向に大きな変化が出ている。

 実に国内消費者の90%以上は、感染拡大からの迅速な景気回復について「悲観的な見方をしている」、または「先行きが分からない」と考えている。

 この90%という数値は他の主要国の50%~80%と比較して圧倒的に高い。

 われわれは、現在までの消費者行動の変化は、この悲観的な見方と劇的な行動変化からみても一過性で終わるものではなく、今後も一定程度、定着すると考え、それがNext Normal(次の新常態・価値)につながると見通している。

 上図に示すように、社会インフラの変化(1)や、労働・雇用体系の変化(2)、そして消費者の意識・行動変化(3)~(6)が起きると見ている。

 これら6つの潮流がNext Normalを形づくるだろう。それぞれ簡単に紹介しよう。

(1)「バランスの取れた監視社会」と「パーソナライゼーション2.0」の到来

 感染経路の追跡や従業員の安全確保といったリスク管理の観点からも、個人のプライバシー権利等にきちんと対応したうえでの「バランスの取れた監視社会」の必要性が生まれる。

 そのため今後、個人情報を企業に提供することへの心理的抵抗感が薄れ、パーソナライズされた商品・サービス提供が増加・定着するだろう。これを「パーソナライゼーション2.0」と呼んでいる。

(2)労働市場の「不均衡」加速

 リモートワークの定着等「新しい働き方」へシフトする中で、「個」のアイデアや実力がより求められ、アウトプットベースの評価、実力主義が加速する。結果として、雇用や給与の不均衡が拡大するだろう。

(3)三・四極化

 経済停滞から中所得層から低所得者層への分化が進展する。超富裕層向けを含めて、製品・サービスに対するニーズがかなり広範になるため、二極化というよりも、三・四極化が進むだろう。

(4)「家消費獲得競争」の激化

 オンラインサービス・eコマースの加速なども含め、家庭における消費者の根源ニーズに対して、業界横断での消費獲得競争が加速するだろう。これは例えば、健康需要に対して、オンラインでの瞑想やフィットネスサービス、または個別配送をベースとした飲食サービスの提供を指す。

(5)「身内と他人」を明確化する動き

 人との接触回避の意識が高まるとともに、近しい関係かどうかをより明確にわけようとする動きが進展する可能性がある。

 中国の個人信用評価システム「芝麻信用」のように、各人のスコアリングが社会インフラとしての機能も含め用いられるかもしれない。こうした信用スコアリングが、身内と他人を線引きすることになるだろう。

(6)「オンデマンド・マイクロローカル経済圏」の発生

 徒歩や自転車、短時間での車や公共交通機関の移動などで過ごせる範囲(マイクロローカル)の経済圏が発生する。

 モバイルやネットサービス等の浸透により、オフラインとオンラインの組み合わせが進み、必要なものを必要なタイミングで取引するというオンデマンド化が進む。都市よりもさらに細分化された、オンデマンド・マイクロローカル型の経済圏が発生・進展するだろう。