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ジョージ・フロイドが白人警察官に殺害された事件をきっかけに、全米で黒人差別に抗議するデモが起きている。人種差別は黒人だけの問題ではなく、あらゆる人たちが向き合うべき問題である。黒人をはじめとする人種的マイノリティの従業員が安心して働ける環境を整備するために、企業とそのリーダーたちは、この問題を無視することはできない。本稿では、リーダーによく見られる間違った対応を明らかにし、彼らが起こすべき具体的なアクションを示す。


 米国は危機にある。本稿執筆時点で、ニュースやソーシャルメディアには、黒人が白人警察官に暴力を振るわれたり、脅されたりする動画があふれている。また、こうした不正義に抗議するデモが、全米30都市以上で起きている。

 平和的なデモが広がる一方で、商店を破壊したり略奪したりするグループもいて、それが警察の厳しい(場合によっては行き過ぎた)対応に拍車をかけている。暴徒が火災を起こした街もあり、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)が依然として大きな影を落とす中、マイノリティのコミュニティが最大の痛手を受けている。

 米国をさいなむパンデミックは一つだけではない――。自粛後の経済再開が本格化するはずだった週に、誰もがそれを強烈に感じることになった。

「私たちは人種差別というパンデミックの中にも暮らしている」と、米国心理学会は声明を発表した。世界のリーダーたちも声を上げている。国連は米国政府当局の行動を促してきた。

 あなたがどのような人種で、政治的アイデンティティがどのようなものであろうと、このトレンドに無関係を装うことはできない。無数の黒人とその仲間たちが傷ついているのだ。また、企業とそのリーダー(CEOから現場のチームマネジャーまで)も、この問題を無視することはできない。

 これまでのダイバーシティ(多様性)、エクイティ(平等)、インクルージョン(包摂)に関するイニシアティブは、従業員エンゲージメントと帰属意識に注目していた。しかし、いま問題になっているのは、職場で特定の集団を軽んじることを大きく超えた問題だ。私たちがいま見聞きしているのは、人間性を否定する不正義と、数百年にわたり癒えることなく、じくじくと痛み続けてきた人種差別という傷に苦しむ黒人たちの姿である。

 ミシガン大学のロバート・セラーズ副学長(エクイティ、ダイバーシティ、インクルージョン担当)ら黒人のリーダーたちは、激しい怒りを表明している。黒人女性オピニオンリーダーのダニエル・カデットらはブログで、「あなたの職場の黒人の同僚は、普段通りに見えるかもしれない。でも、内心は違うはずだ」と訴えている。

 ソーシャルメディアで広く拡散した、あるメッセージも印象的だった。「黒人がパンデミックと警察の両方に苦しめられている間、あなたのズーム会議に参加している黒人メンバーは、口をつぐみ、涙をこらえ、怒りを飲み込んで、なんとか『プロらしく』振る舞おうと奮闘している。そのことを、わかっておいてほしい」

 こうした社会的な事件(とその職場への影響)が、ビジネスパーソンの心理に与えるインパクトは計り知れない。ダイバーシティが関係する事件に会社がどう対処するかは、従業員が職場で安全を感じられるか、それとも自分の人種に基づく脅威を感じたり、権威に対して不信感を覚えたりするかに影響を与えることが、研究からわかっている。

 適切なサポートを受けられなければ、マイノリティの従業員は、自分が置かれた環境には、個人的にも制度的にもネガティブな偏見が存在すると受け止めるだろう。リーダーがインクルーシブな環境をつくるためには、こうした問いに対処する必要がある。