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新型コロナウイルスによる影響を受け、企業は経営戦略の見直しが迫られている。世界を代表するコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー陣に緊急寄稿してもらう本連載第5回では、「ヘルスケア」をテーマにする。コロナ危機に伴い、米国ではオンライン診療が一気に進んでいる。規制緩和も進み、ヘルスケアのニーズや医療提供体制に大きな変化が起きている。これは、非ヘルスケア産業にもおよび、参入障壁が下がり、事業機会が生まれている。

ヘルスケア産業に起きている劇的な変化

 世界が直面している新型コロナウイルス感染症は、何よりもまず人道的な課題である。新型コロナにより、個人や医療に前例のない負担がかかっており、ヘルスケアのニーズ、そして、医療提供の在り方に急速な変化が起きている。

 新型コロナの感染拡大によって、通常診療に大きな影響が出ている。マッキンゼーが米国で実施した消費者調査(2020年4月時点)によると、7割近くが受診予約をキャンセルもしくは延期した。

 また、日本においても日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会が発表した調査によると、全国の病院で4月における初診患者数と外来患者延数が、前年度同月比でそれぞれ4割減、2割減した。

 前述の消費者調査によると、新型コロナ危機が落ち着いた後でも、受診を1か月以上延期しようと考える消費者が半数以上を占め、これらの消費者行動により、患者の重症化や医療介入の遅延が見込まれる。

 患者が対面受診を躊躇する中で、オンライン診療を含めた医療提供の多様化に向けて、各ステークホルダーの受容する度合いが高まっている。

 実際に、オンライン診療を例にとると、下図に示すように、米国では消費者・医療提供者両者でのオンライン診療(テレヘルス)への受容度合いが高まっており、規制の柔軟性も起きている。

 日本においても変化が起きている。オンライン診療は、通常は再診でのみ認められ、対象疾患・施設基準が制限されていたが、新型コロナ対応の一環として、時限的・特例的な措置として初診でのオンライン診療が認められた。

 さらに、新型コロナは、各国におけるパンデミック対策の在り方について問う機会となった。各ステークホルダー間、そして各レイヤー間における危機対応の必要性に加え、マスクや人工呼吸器、PPE(個人防護具)や治療薬などの備蓄そして国内生産の必要性が浮き彫りとなったためだ。

 一例として、日本で売られている人工呼吸器は、9割以上が海外生産である(矢野経済研究所調べ)。さらに、呼気状態を測定できるフローセンサー等の重要部品も海外依存度が高いため、増産にあたっては設計段階からの対応が迫られるのだ。