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新型コロナウイルスによる影響を受け、企業は経営戦略の見直しが迫られている。世界を代表するコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー陣に緊急寄稿してもらう本連載第3回では、「モビリティ」をテーマにする。感染症予防の視点から、消費者の安全に対する意識が大きく変化している。これらの変化はモビリティ産業に甚大な影響を与えるとともに、既存のプレイヤーに破壊的変化を迫っていくだろう。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は既存のモビリティ産業のディスラプションを加速するのか」。マッキンゼー・センター・フォー・フューチャー・モビリティとして、この問いに答えるべく、可能な限りファクトベースでモビリティ産業の現状を分析し、各国の政府・企業と活発な議論を行ってきている。結論を出すのは時期尚早ではあるものの、本稿では、現在見えつつある変化、そしてその意味合いについて考察したい。

モビリティ産業への経済インパクトは甚大

 新型コロナウイルス感染症により、かつてない移動制限が行われている。今後の見通しが不透明な中、自動車・交通運輸をはじめとする既存のモビリティ産業は、最も大きな経済的な影響を受けている。

 このコロナ危機により、交通運輸産業や自動車産業の時価総額が大幅に低下しており、2020年度のグローバル自動車の売り上げは少なくとも25~30%減少し、利益へのマイナスインパクトはさらに大きくなる。

 当ファーム集計によれば、2017年3月から2019年2月までの24カ月で、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)関連投資が1200億ドル程度行われたが、昨年来の自動車産業のスローダウンやスタートアップ投資熱の低下により、コロナ危機以前に投資のスピードは落ちていた。

 コロナ危機はこうした傾向を推し進めることになり、CASE関連投資はより選択的に行われるだろう。

 地域ごとに状況を見ると、様相は異なる。コロナ危機による自動車販売台数の減少は米国・欧州において比較的大きく、中国においてはそれが小さい。

 2020年4月後半の中国における自動車販売台数は昨年並みの水準に回復しており、消費者の購買意欲も、コロナ危機以前の水準に戻っている(当社5月調べ)。

 電動化の浸透についても、地域間の差異が大きくなるだろう。中国政府は、新エネルギー車への補助金制度を2年間延長することを決定している。

 欧州においても、例えばフランスは、総額80億ユーロに上るEV購入インセンティブを含む自動車産業支援策を発表している。実際に欧州におけるEV販売は、各国でロック・ダウンが実施された本年4月時点でも堅調に推移している。

 コロナ危機以前より、電動化は中国・欧州が先行すると考えられてきた。今後、これらの地域においては、自動車販売における電動車のシェア増が加速するだろう。

 一方で、自動運転の進展は、少なくとも短期的にはブレーキがかかる。

 ロック・ダウンにより、自動運転の実用実験は停止を余儀なくされ、モビリティ産業への経済インパクトにより、投資も限定的にならざるを得ない。

 コロナ危機以前より、レベル4(特定条件下における完全自動運転)の実用化には、当初想定されていた以上の時間がかかるといわれていたが、さらにスローダウンする可能性が高い。

 そのため、Next Normalではしばらくルート・用途を限定した自動運転の研究(例:ラスト・ワンマイル輸送)等、より短期的に実用可能な開発が、注目を集めるだろう。