3つ目のアクションは、長期的な将来に向けたものだ。将来はどう変わるのか? いま開発可能なイノベーションを促す、ニーズと機会は何か? どのような危機対応が恒久的な行動モデルになりやすいか?

 最善の回復と被害の対応措置が実現するとき、リーダーは危機の外に目を向け、最悪の状況が過ぎた後の変革と革新について考える。状況を調査し、現在の産業や分野を超え、将来のモデルを構築する専門チームをつくるかもしれない。あるいは、多様な従業員やステークホルダーを巻き込んで、先を見据えた意見を出し合うかもしれない。

 アジアのある金融持株会社は、大規模な経済危機と、反発の多かった買収を経て、自社の将来像を描くための専門チームを設けた。他社がオペレーションの詳細を整備する一方、「新しい銀行」を掲げるこのグループ会社は、着想を得るために銀行以外の分野に目を向けた。

 いま参入している市場と、これから参入する可能性がある市場を調査し、金融サービスを変革する技術を探求した。日常業務を担う従業員にも配慮しながら、危機後の生活にひたむきに焦点を当て続けた。そして、「新しい銀行」のアイデアは、地域で最も成功した企業の一つになる後押しとなった。

 経営再建に成功した大手メディアは、草の根的なアプローチをとり、秘密主義的だった会社にコミュニケーションのチャネルを導入した。独自の放送技術を使い、何千人もの従業員を公開ブレインストーミングに参加させ、視聴者の代表も招待した。

 会社は、従業員主導の新しいアイデアを採用するため、形式主義的な慣行を捨てた。視聴者が制作に関わるような、メディアの将来も考え始めたのだ。すると、役職が低いスタッフの提案から生まれた番組が大ヒットするという、予期せぬ好結果にも恵まれた。

 未来を想像するよう促すと、失敗の連鎖に特徴的な消極性や無力感を抑止する。目下の危機管理と、危機を緩和するための努力と並行して、未来指向のイニシアチブを立ち上げることは、ビジネスの将来だけでなく、士気を保つためにも重要だ。それよって、目的意識と、現在の痛みを将来の可能性に変える機会が生まれる。

 途中の段階を諦めずに乗り越えることは、「ノーマル」への回帰を待ちながら物事を停止させることではない。すべての危機と、それに対する効果的な対応は、新しいルーチンと新しいテクノロジーを備えたニューノーマルをつくる。

 米国同時多発テロ後に金属探知器やその他のスキャナーが登場したように、新型ウイルスのパンデミック後には、至る所で検温が実施されるようになるはずだ。公共の場で導入される新しいタイプの検出器も開発されるだろう。

 より広く目を向ければ、広範に及ぶ危機によって、組織の亀裂、分裂、未解決の問題が露呈している。

 それが新しいスタンダードの探求を促すかもしれない。顧客がサプライヤーに対して、要件の変更を望むこともあるだろう。議員らは規制の追加あるいは強化を望むかもしれない。労働組合は、労働者の安全の下で組織する機会を得る可能性もある。政府当局者は、新しい方法で長年の公教育問題を解決したいと考えるかもしれない。

 正規教育の大半にオンライン化を促した現在の危機の後には、学校に大規模なデジタルリソースが導入されるはずだ。リモートワークを経験したことで、フレックスタイムや、通勤や交通の混雑を緩和させる在宅勤務日、育児のニーズや仕事と家庭の両立の問題への配慮がついに加速する可能性がある。

 チームをエンパワーメントし、コミュニティに変化を促すためにどのような貢献ができるかをブレストすることで、困難な途中にあっても人々を団結させ、鼓舞することができる。そして、ビジネスの将来を注視すれば、イノベーションのための優れたアイデアが間違いなく生まれる。

 従業員やパートナー、コミュニティに対して広範な責任を果たすことを重視するリーダーは、組織が豊富な善意とアイデアを備え、混乱の途中から抜け出す力となる。そのこと自体が、希望の源である。


HBR.org原文:Leading Your Team Past the Peak of a Crisis, April 30, 2020.


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