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新型コロナウイルス感染症による影響を受け、企業は経営戦略の見直しが迫られている。世界を代表するコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー陣に緊急寄稿してもらう本連載第4回では、「サプライチェーン」をテーマにする。コロナ危機に伴い、サプライチェーンにおいて、主に4つの大きな変化が起きている。そしてそれが2つの構造変化につながっていく。経営戦略を立てるうえで見過ごせない変化点を記す。

サプライチェーンをとりまく大きな変化とは何か

 本稿を執筆している時点で、政府による緊急事態宣言が解除となり、各社は新型コロナウイルス感染症の危機からの本格的な回復に向けた動きを計画している段階にある。これまでマッキンゼーでは、世界各地のクライアント企業関係者とポストコロナにおけるNext Normal(次なる常態・価値観)の議論を重ねてきた。

 マッキンゼー・グローバル・インスティチュート(MGI)を中心に、コロナ危機からの回復シナリオを策定、あらゆる業界および事業機能におけるインパクトを検討してきた。成果の一部については、さまざまな場面で発信してきたところである。本稿では、特にサプライチェーンに焦点を当て、Next Normalにおける変化を4つ紹介したい。

(1)国内・域内への回帰

 大規模な自然災害が発生したり、地政学的なリスクが高まったりすると、サプライチェーンの脆弱性が指摘され、その対策の必要性が叫ばれてきた。今回のコロナ危機もその例外ではない。地政学的には、米中関係の先行きが不透明な状況が続いている。

 直近10年をみると、世界の貿易額は増加し続けているものの、総産出額に対する国際貿易の比率は少しずつ減少しており、2007年の28%から10年で22%あまりに下がった。これは中国やインドの内需拡大と、新興国との賃金差を活用した貿易が減少していることに起因する。

 実際、労働集約的な製品の貿易のうち、賃金差の恩恵を得ている比率は2005年の55%から2017年には43%に減少している。

 こうした世界的な潮流に加えて、地政学リスクを回避する観点から、いまサプライチェーンの国内・域内への回帰が検討され始めている。

 これまでは、危機から数年経つと変革の熱量が下がるということが繰り返されてきたが、自然災害とは異なり、コロナの影響は世界全体に及んでいるため、その熱は冷めにくいという見方もある。企業の製造拠点やサプライヤー選定に継続的な変化が起こる可能性があるのだ。

(2)デジタル化とロボット活用の加速

 製造・物流の現場では、感染症への対策の観点から職場環境の見直しが始まっている。スタッフ同士の物理的距離を確保するため、人員や設備の配置がそれまで通りにはいかないからだ。

 また、緊急事態宣言を機に、それまでは出社しなければできないとされていた業務においてもリモートワークが実践された。ここで得られた知見や課題が製造・物流部門のデジタル化に活かされていくだろう。

 具体的には、ビックデータを活用し、人間を介在させない製販プロセス、IoTを活用した生産性改善、仮想現実・拡張現実(VR・AR)を活用した生産指導などだ。コロナ危機後、これらの議論が盛んになった印象だ。

 日本では人件費が固定費的に捉えられ、結果的にデジタル化や自動化の投資対効果が見合わず、北ヨーロッパ諸国などと比べて投資が抑制されてきた。今回を契機に、従業員の健康面での安全性という新たな判断軸が投資基準に加わり、自動化への投資が加速する可能性がある。