私のコーチングのクライアント、エブリンを例に挙げよう。

 最近買収された医療機器会社のプロダクトマネージャーを務める彼女は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの前から、職場で強い不安を抱えていた。エブリンは、いまのところ経済的に安定していることは幸運に思っているが、仕事について情緒的にもがいている。

 買収以来、エブリンは幹部から信頼できる情報を得ておらず、誰を信用すべきかわからない状態だ。その結果、現在リモートで仕事をしているチームに対して明確な姿勢を示せず、自分が信頼できないリーダーのように感じている。上司がチームを擁護してくれず、買収した企業の幹部にもっと明確な態度を要求しないことにも失望している。

 さらに、エブリンに目的意識を与えていたビジネスの本質そのものが消えつつあり、いつまでいまの会社で働くことができるか疑問だ。かつて夢中になった仕事を、幸せを守るために辞めなければならないという不安は、家族の主な稼ぎ手であることと、雇用市場の縮小で高まっている。

 こうした状況が重くのしかかり、エブリンを情緒的に疲弊させている。

 エブリンの夫のジャックはライターで、7歳の娘ジュディスと3歳の息子ベンが生まれる前から自宅で仕事をしている。ロックダウン(都市封鎖)措置が実施される前は、エブリンが仕事に行っている間はジャックが子どもたちの世話をしていた。しかし、夫婦がともに家で仕事をするようになってエブリンの私生活と仕事の境界が崩れ、どちらもうまくこなせてないと彼女は懸念している。

 子どもたちに仕事の電話を邪魔されるとイライラしてしまい、そう感じる自分にもがっかりする。同時に、仕事に対する不安で揺れ動いている。高まる恐怖感を振り払うことができず、以前よりも自分が楽しくない人になったように思う。最悪の日は、自分自身を受け入れることもままならない。

 エブリンの状況が特別なのではない。私のクライアントの多くは、膨大な仕事量から対人関係の問題自分の価値観を曲げざるを得ないこと、疎外され不当な扱いや嫌がらせを受けることまで、仕事面で情緒的に消耗している。

 パンデミックにあって、日常を失うことへの悲嘆、健康と経済的な安定への懸念、外出自粛や孤立に耐えること、あるいは一人で過ごす静かな時間がないことは、ストレスを悪化させる付加的な要因となっている。