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新型コロナウイルスの感染拡大に収束の兆しが見えてきた日本。だが、その経済、経営へのダメージは計り知れない。企業においては現在、人事から財務、生産、販売に至る、すべての経営戦略の見直しが迫られていることだろう。視界不良となったいま、経営のかじをとるうえで何を重視すべきなのか。そこで、世界を代表するコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー陣に緊急寄稿してもらう。コロナウイルスがもたらした経済危機のインパクト、Next Normal(次なる日常・価値観)に対する考え方、そして企業経営に対する示唆を、全10回にわたってご紹介しよう。

今後も一部でウイルス蔓延の見通し
経済停滞は避けられない

 コロナウイルスの蔓延(まんえん)により、世界は大きく変わった。外出が制限される、学校が休校になる、病院が診断や受け入れをしてくれない可能性がある、といったこれまでにない日常の変化に加え、資金繰りの急速な悪化、決算発表の延期、また業績見通しを出せなくなるという形で、企業活動にも大きな影響を及ぼしている。米国では週あたりの失業保険申請件数が2019年末水準の30倍以上、金融危機時の10倍以上に達し、量的緩和により連邦準備制度理事会(FRB)の総資産は3月からすでに2.8兆ドル増加、約6年で3.6兆ドル増加した金融危機時のペースとは比較にならない速度で増加している。

 この未曽有の経済危機がもたらす経済インパクトについて、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートは世界的な経済研究機関であるOxford Economicsと協働して調査を行っている。われわれが発表している経済予測では、「ウイルスの蔓延と公衆衛生上の対応」の有効性と、公衆衛生上の対応がもたらす「連鎖的な影響に対応する経済政策」の有効性の2軸で、3×3のシナリオを検討している。すなわち、ウイルスの拡散を抑えるためのロックダウン、移動制限、ソーシャルディスタンスの確保等がどれだけ有効にウイルスの抑制に寄与し、一方で公衆衛生上の対応がもたらす経済的マイナス影響をどれだけ経済政策的に支援して下支えすることができるか、という視点の組み合わせである。マッキンゼーは図中A1とA3のシナリオを予測の中心に据えている。

 世界の約2000人のエグゼクティブにどのシナリオに落ち着く可能性が高いかを尋ねると、約4割は図中A1、すなわち2020年の国内総生産(GDP)が世界で―6.5%、米国―8.1%、欧州―11.1%、そして日本は―8.0%と予想されるシナリオを選択している。このGDPの落ち込みは、2007~08年の金融危機と比較すると、落ち込みがより急激で深く、同じくらい長い経済危機となる。更に、4月の調査と5月の調査を比較するとA1を選択する人の割合が高くなっている。

 このように先行きが不透明な中、企業はどう自社を運営し、危機に立ち向かうべきなのか。