Rainer Elstermann/Getty Images

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、多くの人が不安を抱えて暮らしている。不安だけではなく、怒りやいら立ちなど、さまざまな感情があふれ出てくるものだ。その理由は何か。それを知るためには、自分自身に好奇心を持つことが不可欠である。自分と真摯に向き合うことで、多様な感情を受け止めることができると筆者は言う。


 とても不安で落ち着かない――。筆者のクライアントで、投資銀行のCEOであるケラー(仮名)は打ち明けた。

 それに対して、筆者は「当然です」と答えることもできた。「いまはまさに不安定な時期です。しかもあなたは、混乱している組織のCEOだ。キャッシュフローや事業の継続も心配でしょう。また、投資業界ですから、いまのような予測のつかない相場変動を経験して、不安にならないほうがおかしい。よくわかります」と。

 それは、エグゼクティブ・コーチとしての模範解答だっただろう。クライアントへの共感と理解とつながりを表現し、筆者の知識と専門性も示せる。また、お互いに気分よく会話を終えられたに違いない。だが、結果的には、それは間違いだっただろう。

 なぜか。それは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックのように、過去に例のないことが起こり、誰かが自分の弱みをさらけだしたときは、もっとパワフルな答えがあるからだ。共感する以前に重要かつ必要なこと、それは好奇心を持つことだ。

 なぜなら、実のところ筆者は、ケラーの身の上に何が起きているかを知らなかったからだ。それにケラー自身も、自分に何が起きているかわかっていない。私たちは、経験のないことを経験をしているのだ。

 また、「模範解答」は真実に則していたかもしれないが、筆者自身は、何が真実かは知らない。ということは、ケラーに理解を示す前に、理解を構築しなくてはいけない。ケラーに質問をして、心を開いて耳を傾け、学ぶ必要があるのだ。

 それには、謙虚でなくてはならない。「謙虚」は「知っている」とは違う。そしてそれは、最終的にはほぼ常に、共感につながり、やがて思いやりにつながる。