(1)組織全体で仕事を「持ち運び可能」にする

 新型コロナとともに生きることが必要とされているいま、最も重要な仕事に、できるだけ早く、効率的に人を動員できることが、これまで以上に重要になっている。たとえば、バンク・オブ・アメリカは、政府の新型コロナ救済資金を受け取るために、消費者とスモールビジネスのオーナーから殺到している問い合わせに対処するため、社内全体から一時的に3000人以上を関連部署へと配置転換した。

 厳格な雇用上の制約を取り除けば、適切な人材と業務をマッチングさせて、日々変化する課題をリアルタイムに解決することができる。組織上の階層や手順を飛び越えて活動する権限を与えられたチームのネットワークは、危機に迅速に対応するうえで極めて重要になる。

 すでに、アリアンツ・グローバル・インベスターズやシスコなどの多くの組織が、仕事をさまざまな業務やプロジェクトに分解して、関連スキルを持つ人を全社から募集してマッチングする「社内プロジェクト・マーケットプレイス」を立ち上げている。こうしたマーケットプレイスは、突然、通常業務を失った社員が、自分の中核的なスキルや隣接スキルを活用して、自分が貢献することができる業務を迅速かつ簡単に見つけることを可能にする。

 このようなマーケットプレイスを使えば、突然、新規採用を停止しなくてはならなくなっても、病欠中の従業員の穴を迅速に埋めたり、最重要プロジェクトのメンバーを追加したりできる。

 実際、最近、新規採用停止を言い渡された人事マネジャーは、新規採用者を当てようと思っていたポジションを5つの業務に分割し、それぞれを社内のスタッフがパートタイム的に経験できるようにした。そうすれば、既存の社員は学習して能力を伸ばす機会を得られるし、このマネジャーもポジションを埋めるという目標を果たすことができる。

 仕事を複数の業務に分解すると、どの業務なら在宅勤務できるか、または外国など遠隔地の従業員でもこなせるかを見極めやすくなる。リモートワークが可能な隣接業務をまとめて新しい職種をつくったり、オンサイト業務が必要な仕事を、別の少数の職種にまとめたりといったことも可能だろう。そうすれば、会社や現場に行かなければならない職種を制限することができる。

(2)自動化を加速する

 一部の仕事は、自動化によって信頼性や安全性やウェルビーイングを高め、突然の需要急増に対処することができる。実際、現在の経済環境では、自動化は雇用を奪うものではなく、危機への対処に不可欠な能力になりつつある。

 ここ数週間、多くの公益企業は、自動化ソフトウェアをこれまで以上に活用して、人間がシステムをリモートで動かし、監視し、管理できるようにしてきた。これをやれば、人間がウイルスにさらされるリスクは減り、公益企業が滞りなくサービスを提供することができる。

 電話での問い合わせ増加に対処するため、コールセンターの自動化を拡大している企業もある。自動化すれば応答時間を短縮できるし、スタッフは取引業務から解放されて、顧客がいま、これまでになく必要としている、思いやりとEQ(心の知能指数)の高い対応をできるようになるだろう。

(3)産業界で人材をシェアする

 いま、リーダーは自問する必要がある。このような困難な時期に、組織と人のレジリエンス(再起力)を高めるためには、幅広い人材エコシステムをどうすれば活用できるのか。

 その独創的な方法として一つ考えられるのは、産業界全体の人材交流システムを構築して、今回の危機で一時的に仕事を失った従業員(航空業界やホテル・飲食業など)を、仕事が急増した組織(医療、物流、一部小売店など)に振り向けることだ。こうすれば、一時帰休に伴うフリクショナルコストや評判コストを防ぐこともできる。

 全米最大のスーパーマーケットチェーンであるクローガーは、レストラン向け食品卸売業者シスコ・コーポレーションの一時帰休者を、30日間借りている。

 中国でも数ヵ月前に、企業間で従業員をシェアするクリエイティブな試みが始まった。レストランなど仕事がなくなった人を、アリババが運営するレジ無しスーパー「盒馬鮮生(フーマ)」など、需要が急増している組織で一時採用することにしたのだ。これにより、フーマの従業員シェア計画には、40社以上から3000人以上が参加した。

 このようなスキームではまず、従業員を引き受ける企業が探しているスキルを明確にする。そのうえで、従業員を提供する企業とともに、レンタル期間や給与・社会保障・保険といった細かい条件を決定する。

 新型コロナウイルスのパンデミックは、困難な時期をもたらしているが、前例のない独創性を発揮するチャンスの時期でもある。

 現在の困難な経営環境がもたらす制約に基づき仕事を見直すことは、仕事の未来を加速し、仕事をどこで、誰がどのようにするかについて、新しい道を開く可能性がある。それは究極的には、組織のレジリエンスと効率性を高めるとともに、人々がより健康で持続可能な暮らしを送る助けになるだろう。


HBR.org原文:How the Coronavirus Crisis Is Redefining Jobs, April 22, 2020.


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