デジタルプラットフォームが優位性を持つのは当然だが、そうでない既存企業にも望みはある。

 世界第2の規模を持つ保険会社である中国平安保険は、10年をかけて自社の事業をエコシステムへと変換してきた。このエコシステムは、金融、不動産、自動車、ヘルスケア、スマートシティ関連サービスという5分野に特化している。

 平安は生命保険事業が新型コロナによって大きな打撃を受けたものの、同社のデジタルサービスは、30以上もの銀行を含む法人顧客から引き合いがあった。これはアマゾンウェブサービスと同様のものを、金融分野向けに特化したサービスだ。

 コロナ危機のさなかの2020年2月、平安は技術投資を拡大する計画を発表した。平安グループを創業した董事長兼CEOの馬明哲(マー・ミンジェ)はこう述べている。「この感染拡大との闘いは、中国、そして中国の産業を変革するうえで、テクノロジーがいかに重要かを浮き彫りにしています」

 平安のエコシステムがひときわ強力である理由は、中核の金融サービスに隣接する、自律的かつ相互依存的な事業群が揃っているからだ。これらの事業には多岐にわたる収益源とビジネスモデルがあり、多数の顧客ニーズを満たしている。そしてクロスセルの機会と、一つのビジネスから別のビジネスへと新規顧客を引き込む機会に恵まれている。

 平安のエコシステムは、ヘルスケア、中古車、不動産の分野で中国最大規模のプラットフォームを統合しており、スマートシティ・ソリューションと資産管理も提供している。したがって、危機の時期に顧客のニーズが大きく変わっても、自社エコシステムのいずれかのサービスが、新たなニーズにも対応できる可能性が高いのだ。

 たとえば、ヘルスケアのオンラインサービスを提供する平安グッドドクターを考えてみよう。コロナ危機以前には、グループの事業全体に占める割合は小さく、立ち上げ以降赤字を続けていた。今日では、実際に利益を出し始める可能性が見込まれている。

「オンラインでの医療相談は、患者が感染性の病気の罹患を避けられる効率的で便利な方法であることが、新型コロナの感染拡大期を通じて証明されています」と、平安グッドドクターの董事長兼CEO王涛(ワン・タオ)は述べている

 これらの子会社は自律的に活動する事業群であり、企業内官僚制度に属する部門ではない。全体で一つのシステムを成す平安は、ある事業で損失を出しても、他の事業で利益を取り戻せる余裕がある。言い換えれば、エコシステムの優位性は、ダイナミックな収益の多様化を可能にするわけだ。