ケーススタディ(2):聞き手について考え、ポジティブな点や強さを伝える

 アンドレス・ラレスは、ボルティモアを拠点に企業内研修とコンサルティングを行う、シャピロ・ネゴシエーションズ・インスティテュートのマネージングディレクターである。新型コロナウイルスによるビジネスリスクがひとたび明らかになると、彼と2人のパートナーは、会社の状況をどうチームに伝えるかについて話し合ったという。

「2008年の金融危機で、それぞれがどのような経験をしたかを話した」と、アンドレスは述べる。「それから当社の従業員の視点で [目下のパンデミック] について考えた。皆が考えていることは何だろうか。何を怖れていて、何を不安に感じているだろうか、と」

 この対話を基に、アンドレスは自分たちのチームへの伝え方に関する、指針となる原則をいくつか考え出した。彼らのゴールは従業員の懸念に共感し、敏感であることで、なおかつ中間管理職のマネジャーたちがリーダーとしてステップアップできるように権限を与えた。

 まず、コミュニケーションをいつもより頻繁に交わすことにした。「毎週月曜日にチームの全員とミーティングを行い、中核となるマネジャーたちと週に2度、1対1のミーティングをしています」と彼は述べる。「時間はかかるけど、とても有益だ。懸念していることを共有できる場となり、我々が会社全体で打ち出す計画をマネジャーとともにつくり上げるのに役立っています」

 このような1対1の会話は、計り知れないほど貴重なものになってきた。

「誰もが将来に不安を感じ、先行きが見えにくいときに、リーダーから聞いた話が真実であると実感できることが大切なのです」とアンドレスは語る。「幹部の我々が常に明確であるようにし、マネジャーたちは当事者意識や責任感を持って、進むべきだと信じる方向へと会社を動かしていってもらいたいと思っています」

 さらに、部下に伝達する以前に、まずマネジャー自身が経営幹部からのメッセージを信じ、自信を持てるようにした。「マネジャーたちには、自分のチームに対して思いやりを持ち、隠し立てをしないように、そして我々全員が最善だと合意した方向へ、ためらわず導くようにと指示した。それが、会社全体での一体感、危機の時に不可欠なものをつくり出したのです」

 現時点までの数週間、全従業員がリモートワークをしており、アンドレスと2人のパートナーはまだ、全従業員に関わる大きな変更を行う必要には迫られていない。

「当社では一人も解雇しておらず、給与の減額もしていない」とアンドレスは語る。「もちろん解雇の可能性について考えたし、今後も考える機会はあるでしょう。しかし、すぐには行いません。向こう数週間で起こりうる最悪の事態は減給でしょう」

 アンドレスは、会社の財務状況を従業員に率直に示している。ビジネスは打撃を受けている。しかし、彼はすでに米国の給与保障プログラムに申請し、皆を雇い続けられることを期待している。

「言いたくないことを言わなければならないときが来るかもしれないが、まだその時期ではない」と彼は語る。「(それを聞くと)皆が安堵のため息をつく」

 重要なのは、アンドレスがチームを安心させ、皆が「この危機のさなかに一緒にいる」という強いメッセージを発していることである。

 アンドレスは、この1ヵ月間で自分のチームが成し遂げたことに、とても満足しているという。「我々のチームは、かつてないほど勤勉かつ生産的に仕事しています」とも述べている。

「組織内の人々がリーダーとしてステップアップし、ふだんなら自分たちの責務ではないようなタスクにも取り組んでいるのを見たとき、本当に誇らしく思いました」


HBR.org原文:How to Talk to Your Team When the Future Is Uncertain, April 20, 2020.


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