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新型コロナウイルス感染症のパンデミックは私たちの生活に大きな打撃を与え、職を失った人も少なくない。組織に属して働くことが自分のアイデンティティになっている人にとって、この変化は受け入れ難いものだ。男性の場合は特に、解雇されたことによる失望感が大きい。この状況を改善するために、国と企業は支援すべきだと筆者は主張する。


 トッド(本稿の人名はすべて仮名)は健康な45歳。だが、高級ダイナーに入ってきた彼は猫背で、ずっと自分の指をそわそわと触り、緊張した雰囲気を発していた。失業して10ヵ月ほどだという。

 家族はとても大きな経済的打撃を受けた。それでも彼は小声でこう打ち明けた。「最も辛いのは、自分に価値を見出してくれる人がいると思えないことです」

 私は、まもなく刊行されるCrunch Timeの取材で2014年に、マーケティングの仕事をしていたトッドにインタビューした。この本では、米国に住む、子どもを持つ既婚の高学歴プロフェッショナルの失業体験について書いている。

 私がインタビューした他の数十人も同じだが、トッドにとって会社で働くことが自我を保つカギであり、自分の社会的地位や自尊心を測る基準である。それなのに、この自尊心はしょっちゅう脅威にさらされている。なぜなら、トッドのようなプロフェッショナルは、新型コロナウイルスのパンデミックよりもずっと前から続いている、労働市場の不確実性の犠牲者だからだ。

 失業率が歴史的レベルに達しようとしているいまこそ、アイデンティティと仕事とのつながりを再考する、絶好のタイミングだといえる。