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新型コロナウイルス感染症のパンデミックという史上最大の危機に直面するいま、リーダーには何が求められているのか。ビジョンを共有し、希望に満ちた未来に向かって組織を牽引することだと思うかもしれないが、そのやり方には限界がある。危機時のリーダーシップには、苦悩をやわらげ、混乱した状況を整理できるよう手助けするために抱きしめてあげること、すなわち「ホールディング」が不可欠だと筆者は指摘する。


 管理職のグループによいリーダーの条件をたずねると、答えを待つまでもない。誰かが「ビジョンです!」と答え、皆がうなずく。

 この20年間、私は同じ質問を数え切れないほど投げかけてきた。さまざまな部門や業界、バックグラウンド、国や地域から集まったシニア・エグゼクティブ、中間管理職、若い学生たち。彼らの答えいつも同じだ──ビジョンは人を鼓舞し、感動させる。

 拡大、支配、自由、平等、救済。それが何であれ、リーダーのビジョンが方向性と希望を与えてくれるなら、私たちはそれに従うだろう。ビジョンを持たない人は、リーダーを名乗ることはできない。

 このようにビジョンに魅せられることは、リーダーシップの概念が抽象化されるという、より大きな問題を反映している。ビジョンは私たちの想像力を虜にするが、健康に対してよい影響はほとんどない。私たちはさまざまなビジョンを追求して肉体を酷使し、その犠牲を喜びさえする。国のために命を投げ出し、会社のために疲労困憊するまで働き続けて

 ビジョンは、神秘主義者が掲げるものも、リーダーが掲げるものも、未来を約束して、私たちに命を差し出せと迫る。それだけの犠牲を払う価値がある場合もあれば、ない場合もある。ビジョンは私たちの心に火をつけることもできれば、私たちを焼き尽くすこともできる。