従業員自身が強みを見出すのに役立つ質問をする

 答えのない質問に直面してもなお、リーダーは、従業員を力づけることができる。広範な質問をすることで、従業員の心の奥底にある不安を引き出すのだ。

 質問に答える過程で、従業員は自分の強みを発見する可能性があり、結果的には従業員が聞きたいと思われる答えをリーダーが口にするより、はるかに効果的である。

 私のクライアントの一人が話してくれた例を挙げよう。不安を抑えきれなくなった直属の部下が、彼女に涙ながらに問いかけた。「この状況はいったい、いつ収束するのか」

 部下を思いやって、「早ければ5月半ばから、安全が確認された社員から順次職場に戻れると聞いている」と答えた。すると1時間もしないうちに、彼女は5通ものメールを受信した。どれも、「5月半ばまで仕事を再開できないというのは本当か」という質問だった。

 部下のためによかれと思って答えたにもかかわらず、間違った情報と見当違いによる、ぬか喜びの連鎖反応が始まってしまったのである。

 このような状況では、まずいったん立ち止まり、質問の根源にある恐れについて考え、その恐怖をやわらげるのに役立つ質問をするのが有益である。

 たとえば、前述のクライアントは、こう言えたはずだ。「残念ながらいつ収束するのか、私にもわからない。でも、あなたの質問を受けて、もっと深い疑問がわいてきた。現状であなたは、どの部分に対処するのが最も大変だと感じているだろうか」

 このように質問すれば、部下の心の奥底にあった、より大きな不安が明らかになり、部下がそれにうまく対処する助けとなっただろう。

 不安に駆られた従業員からの問いかけに応じるうえで、役に立つ質問をいくつか紹介しよう。

・状況に適応できずにいると感じた場合は、こう問うとよい。「今回の危機から得た、想定外の教訓は何か」。この質問は、自分が思っているよりも有能だと、従業員自身に気づかせるのに役立つだろう。

・直面している危機の先まで見ることができずにいる場合の質問は、「この危機が過ぎ去ったあとも、続いてほしいと願うことは何か」。この質問は、自分たちが楽しめることをすでに発見していると認識するのに役立つだろう。たとえばリモートワークの利点、家族と過ごす時間が長くなったことなどである。

・従業員が自分のレジリエンス(再起力)に気づき、不安と闘うのをサポートするための質問は、「今回の危機で起こりうる最悪の事態はどんなことか」。この質問は、実際の不安と、根拠のない不安を区別させるのに役立つだろう。

・「かつて克服した、あるいは耐え忍んだ最悪の事態は何か」と尋ねることは、各自の経験から希望や不屈の精神をうまく引き出すのに有効である。

質問を批判と解釈してはいけない

 不安に駆られた質問には怒りの響きがあったり、執拗な、あるいは批判的なトーンを帯びていたりすることが多い。質問した人にそのような意図がなくても、その口調はフラストレーションそのものに聞こえ、「あなたがすでに解決しているべき問題を、なぜ私がわざわざ指摘しなくてはいけないのか」と問い詰められているように感じる。

 そうなると、リーダーは不当に批判されていると感じ、自己防衛的になってしまいがちだ。しかし、相手を思いやると事前に決意しておくことで、このような場面に備えることができる。

 現在、大勢の人々が最悪の事態を恐れており、誰かに安心させてほしいと思っていることを覚えておこう。望もうが望むまいが、人の上に立つあなたには、部下に安心感を与えることが、おのずと求められる。もし上司が自己防衛的になったら、頼ってきた部下の感情をないがしろにし、仕事の意欲を削ぎ、部下に共感する機会を失う。

 こうした状況において最も思いやりにあふれた答えは、自分にもわからないと冷静に認めることである。厳しい質問に対して真実を語るのは、質問者が誰であれ、その人を信用していると示すことになる。