認知学習と社会性と情動の学習を組み合わせると、適切な能力を身につけると同時に、人間らしさを維持することができる。この2つの学習を切り離してしまうと、私たちは途方に暮れたり、妄想にさいなまれたりする。

 ロジスティクスを整えても、部下たちがどう感じているかを気にかけないマネジャーは、堅実な計画を実施できないだろう。逆に、昔ながらの思い込みを大事にしすぎて、新しい情報を無視するチームも失敗するだろう。

 危機のときは、社会性と情動の学習を怠ると、とりわけ危険な結果を招きかねない。孤独や不安といった社会情緒的な苦悩は、認知にダメージを与える場合があるからだ。だからこそリーダーと教員は、キャリアアップにおいても授業計画においても、後回しにされがちな懸念を最優先しなければならない。

 多くの新米教員は、認知学習に力を入れ、コンテンツを教えることを優先する。やがてキャリアが長くなってくると、社会性と情動の学習をファシリテートする能力が高まり、事実を詰め込むだけでなく、生徒たちが自由に考えられる場をつくり始め、彼らの本当のニーズに応えられるようになる。

 ビジネスリーダーもそうだろう。エグゼクティブの地位はまず、専門的な知識や経験を評価されている人物によって埋められる。その地位に就いてからようやく、人を管理するスキルを磨くよう促されるのだ。

 これでは危機のとき、ビジネスリーダーも教員も、知識や経験を(極端に)頼りにすることになる。だが、このようなときリーダーや教員に一番求められるのは、人と情緒に注目する能力だ。

 先ほど述べたように、オンラインでできるのは認知学習だけだという思い込み(偏見と言ってもいいかもしれない)は幅広く存在する。この偏見になるべく迅速に対処し、学びの場でも仕事でも社会性と情動の学習を重視すべきだ。

 さもないと、能力と人間性の両面がこれまで以上に必要とされるときに限って、学習もリーダーシップも縮小し、人間性が失われることになる。新しい情報とテクノロジーをマスターしなければならない(ように見える)危機のときでも、知力と協力の両方が必要とされるのだ。

 危機のとき、リーダー(と教員)が最優先するのは、安心を提供し、パフォーマンスを維持することになりがちだ。すべてが崩壊しつつある中で、「これまで通りを維持しなくては」という思考が働く。専門知識や経験を駆使して、無能をさらしたくないと考える。

 多くの場合、誰もがそうなる。それは、部下(あるいは生徒)やビジネスを大切に思っていて、混乱を収拾したいと思うからだ。しかし、このような過去に例のない危機では、リーダー(や教員)もまた、初心者に過ぎない。

 社会性と情動の学習に重点を置くと、成果を上げなくてはならないという重圧や、生徒を落胆させず、これまで通りのプロセスを維持しなくてはならないという重荷から解放され、全員によるホリスティックな学習が可能になる。

 このような学習こそが、危機を理解し、変化を起こすことを可能にする。また、人間らしい仕事のやり方を維持し、対面学習で最も大切なこと、すなわちビジネスと自分自身の変化を続けさせてくれるのだ。

 現在のような非常事態に学習文化を育むことは、単なるスローガンでも贅沢でもなく、あなたの組織と人を守る手段である。仕事をバーチャルでも人間らしくやっていくためには、能力と同じくらい勇気が必要とされるのだ。


HBR.org原文:Keep Your People Learning When You Go Virtual, April 10, 2020.


■こちらの記事もおすすめします
不安が伝染するのを封じ込める方法
危機に直面するいまほど、想像力が大切なときはない
リモート教育は大学教育の未来をどう変えるか