とはいえ、オンライン学習は、Zoomのアカウントを設定したり、従来通りのビジネスを継続したりするよりも、はるかにやっかいな問題だ。

 筆者らの考察では、ビジネスリーダーと教員は、この移行期に2つの本能的なリアクションを示しており、それがこの問題を克服するのを難しくしている。第1に、学習の目的ではなくメカニズムに目を奪われていること、第2に、新しい世界で互いが共存し、共感する方法を学ぶ必要があるのに、コンテンツにばかり注目していることだ。

 バーチャルワークへの急速な移行が進む中、筆者らのように教育を提供す側も、新しいオンラインプラットフォームへの対応や、パフォーマンスを維持できるかどうかという不安に襲われ、学習そのものに集中しにくくなっている。

 一方、ビジネスリーダーは大急ぎでバーチャルプラットフォームを構築したものの、それを従来通りに仕事を進めるためのツールと見なすだけで、新しい仕事のやり方を学ぶスペースとは考えない。

 しかし、いまこそリーダーも教員も、学習イニシアティブの目的を批判的に検討すべきだ。シュナイダーエレクトリックのバイスプレジデントで、同社のリーダーシップアカデミーを統括するピーター・ホープは、今年の1月以降、香港でソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)を実践しつつ、世界中に散らばるチームをリードしてきた。

 ホープによると、このような移行期には、リーダーは自分が伝えたいアイデアや、それを最もうまく伝えられるプラットフォームを選ぶことに夢中になるあまり、本来ならば部下たちをエンパワーメントするはずのコミュニケーションを混乱させる傾向がある。これはまさに学習によって身につけるべきスキルであり、それはオンラインでも可能だと、ホープは断言する。

「デジタル空間では、何かをやれと命令するだけでなく、集団で学習することが可能だ」と彼は言う。「あらゆることが流動的ないまだからこそ、学習に力を入れるべきだ」。リーダーがそのやり方をわからないと、「ビジネスに支障が出ることになる」。

 ホープによると、彼が統括する学習イニシアティブの半分以上は、オンラインでもスケジュール通りに進んでいるという。ただ、そのシフトが新型コロナウイルスの問題が起きる前から始まっていなければ、そこまでスムーズにいかなかっただろうと認める。「デジタル学習の準備をしてこなかった企業が、危機のときに急にやろうとしても難しいだろう」

 その理由の一つは、バーチャルワークへの移行は不安を引き起こし、「学習とは、デジタルツールを通じて知識を効率的に移転するプロセスにすぎない」という、単純かつ視野の狭い見方が支配的になるからだ。危機のときは不安が一段と大きくなるため、この傾向はいっそう明確になる。

 しかし、学習が、専門家と学習者の間の知識のやり取りにすぎないことはめったにない。そこには思考を解放し、成長を促す人間関係が存在する。混乱時には、それを乗り越えるためにどのような学習が最も重要かをリーダー(と教員)が見定め、さまざまなタイプの学習を統合して、ビジネスと人を引っ張っていかなくてはならない。