0か1かではなく、確率という観点で考える

 非生産的な不確実性の中で、人は結果を2通りしか想像できずに行き詰まることが多い。一方、不確実性に対処することに熟達したイノベーターは、確率で物事を考える。

 筆者は、INSEADのエグゼクティブコースで教えているときに、その効果を実体験した。それはちょうど、パンデミックが勢いを増している時期だった。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、この危機について演説を行うことになっていた。国際的な学生たちは、大統領が国境を閉鎖すれば、フランスに足止めされることになると心配し始めた。

 0か1か(出国できるかできないか)しか考えられなかったときには、誰もが大きな不安を感じた。ところが、ありうる結果を列挙して、それぞれに起こる確率を当てはめると、見方が変わった。国境が数日のうちに閉鎖される可能性は高く、それより早く閉鎖される可能性は中程度、いますぐに閉鎖される確率はゼロに近いことに気づいた。そのおかげで、大いに安堵した。

 この体験で思い出したのが、フランスの哲学者ミシェル・ド・モンテーニュの悔恨の言葉だ。「私の人生は、とんでもない不運に満ちていた。そのほとんどは起こらなかったが」。