(7)専門的なスキルの訓練は、タイミングよく提供する

 多くの企業は大規模な訓練施策に投資するが、従業員は学んだことをすぐに実践しなければ、早々に忘れてしまう。したがって、プログラミングのような基本的スキルは基礎訓練に入れるべきだが、専門的なアナリティクスの概念や運用の訓練は、それらが必要となる直前(たとえば概念実証の前など)に提供するほうが効果的だ。

 ある小売企業は、実験のデザインで細部を担当するサポートアナリストを訓練する際、最初の市場テストの直前になってから実施した。すると、その後に知識は忘れられることなく定着し、かつては無縁だった概念(「統計的信頼度」など)がアナリストらの日常用語となった。

(8)顧客だけでなく従業員を助けるためにも、アナリティクスを活用する

 従業員はデータを巧みに扱う能力によって幸福が高まるという、潜在的な意義は見過ごされがちである。自力でデータの取り扱いができるよう従業員を後押しすることで、彼らの満足度を高めることができるのだ。印象的なタイトルのプログラミング教本、『退屈なことはPythonにやらせよう』に書かれている助言を実行できるようになるのも、その一例である。

 データをもっとうまく扱うための新たなスキルの習得について、抽象的にしか示されていなければ、ほとんどの従業員は、辛抱強く学習して仕事を改善しようという意欲を十分に持てない。しかし、目の前のゴールが自分に直接的なメリットをもたらすものであれば(時間を節約できる、仕事をやり直す必要がなくなる、頻繁に必要となる情報を取得できるなど)、学習という面倒な作業も選択肢に入るわけだ。

 数年前、ある大手保険会社のアナリティクス担当チームは、クラウドコンピューティングの基礎をみずから学習した。そうすれば自分たちのニーズにIT部門が追いつくのを待たなくても、大規模なデータセットで新しいモデルを実験できる、という単純な理由からだ。

 この経験は、IT部門がようやく同社の技術インフラの改修に着手したときに、基盤として活かされることになった。より高度なアナリティクスのためのプラットフォーム要件について概略を打ち出す際に、アナリティクスのチームは答えを示すだけでなく、実際に使えるソリューションを実証できたのである。

(9)少なくとも短期的には、柔軟性を犠牲にしてでも一貫性を取る

 データを頼りとする企業の多くは、社内に異なる複数の「データ族」を抱えている。それぞれに固有の、優先的な情報源や、自分たち用にカスタマイズした指標があり、得意なプログラミング言語も異なる場合がある。

 組織全体としては、これはきわめてやっかいな事態を招きかねない。本来ならば共通であるべき指標の、微妙なバージョンの違いを調整するために、社内で膨大な時間が無駄になるかもしれない。複数のモデラー間で仕事のやり方が一貫していない場合も、損失が生じる。

 もしプログラミングの基準と言語が事業全体で統一されていなければ、アナリティクス担当者が変わるたびに再訓練が必要となるため、異動がスムーズにいかなくなる。加えて、異言語間の翻訳が常に必要であれば、社内でのアイデア共有があまりに面倒となる。

 それよりも企業は、基準となる指標とプログラミング言語を決めるべきだ。ある大手グローバル銀行はこれを実行するために、投資銀行部門と資産管理部門の新規採用者にPythonによるプログラミングの習得を課している。

(10)アナリティクスに関する選択について、説明する習慣をつけさせる

 アナリティクスに関する問題のほとんどにおいて、単一の正しい方法というものは、めったにない。データサイエンティストは、複数のトレードオフによって選択をしなければならない。

 したがってアナリティクス担当チームに対し、次の問いを投げかけるとよい。問題にどうアプローチしたのか。どんな代替案を検討したのか。必要なトレードオフについて理解しているのか。他の選択肢ではなく、その選択肢を選んだのはなぜか。

 これらを当然の質問として訊ねることで、問題へのアプローチに対するチームの理解を深めさせることになる。そして、より幅広い選択肢の検討と、基本的な前提の再考を促すことにもしばしばつながる。

 あるグローバルな金融サービス企業では、不正を検知するための機械学習モデルがかなり旧式であり、実装するには速さが足りないと、最初は思われていた。だがその後、このモデルはいくつかの単純な調整をすれば超高速化できることに同社は気づいた。そして運用を開始したところ、不正を正確に検知する能力が飛躍的に向上した。

 企業、およびそれを構成する部門も個々人も、えてして習慣に頼るものである。他のやり方はリスクが高すぎるように見えるからだ。

 データは、仮説を裏づけるためのエビデンスをもたらしてくれる。そしてマネジャーに対し、新たな領域に飛び込むための自信と、暗闇へのジャンプなど必要としないプロセスを与えてくれる。

 ただし、データドリブンになることをただ目指すだけでは不十分だ。企業がデータに従って動くようになるためには、データドリブンの意識の広がりを促す組織文化を醸成しなければならない。

 リーダーは、みずから範を示し、新たな習慣を実践し、「データに根差した意思決定」の本当の意味について期待を設定すれば、この変化を後押しできるのだ。


HBR.org原文:10 Steps to Creating a Data-Driven Culture, February 06, 2020.


■こちらの記事もおすすめします
データドリブンの意思決定は4つの問いから始まる
デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて従業員を動かす5つの要諦
デジタルトランスフォーメーションに重要なのはテクノロジーではない