(4)データへのアクセスに関する基本的な問題には、すぐに対処する

 我々が耳にする不満の中で圧倒的に多いのは、事業の各所にいる人々が、最も基本的なデータでさえも入手に苦労しているということだ。

 興味深いことに、社内でデータへのアクセスを民主化する努力がたびたび行われても、この状況はなくならない。情報が足りなければアナリストは十分な分析をせず、データドリブンの文化など開花どころか根さえ出ない。

 優れた企業は、この行き詰まりを打破するためにシンプルな対策を用いている。自社の全データを再編するという、壮大な(しかし時間のかかる)取り組みではなく、少数の主要な測定データのみに誰でもアクセスできるようにする、という取り組みを一括で行うのだ。

 ある大手グローバル銀行の例がある。ローンの借り換え需要に関する予測の向上を目指していた同社は、マーケティング部門向けに、最も適切な測定データ群に的を絞り、基準となるデータレイヤーを構築した。この場合の最適な測定データとは、融資条件、ローン残高、物件情報の3点に関するコアデータ、ローン組成の経緯を示す販路データ、そして顧客の取引銀行全般に関するデータである。

 どんな施策であれ、最初にどのデータをアクセス可能にするかを巧妙に選ぶことは、経営首脳陣の検討事項だ。そのデータソースに他の数値を紐づけるよう後で求めれば、活用を大幅に促進できる。

(5)不確実性のレベルを計る

 100%の確実性などないことは、誰もが受け入れる。とはいえ、ほとんどのマネジャーは従業員に対し、確実性を計る尺度を示さないまま、確実性はどの程度かという答えを求め続ける。

 これでは好機を逃していることになる。すなわち、不確実性のレベルを明確にして定量化するようチームに求めれば、3つの大きな効果があるのだ。

 第1に、そうすることで意思決定者に対し、不確実性の種に正面から取り組むよう迫ることになる。そのデータは信頼できるのか。そのモデルを信頼するには事例が少なすぎるのではないか。特定の要素、たとえば新たな競争力学などは、関連データを欠いたまま取り入れることは不可能ではないのか――。

 ある小売企業は、直販モデルにおけるクーポン引き換え率の明らかな悪化は、顧客の住所データが古くなる一方であるためだという原因を探り当てた。そこで更新作業を行い、データの鮮度を維持するプロセスも加えることで問題は解決した。

 第2に、アナリストは不確実性を厳密に評価する必要性を通じて、自分たちのモデルへの理解を深めることができる。

 たとえば英国の某保険会社では、リスクを測定するコアモデルが市場のトレンドにうまく適応できていなかった。そこでトレンドを捉えて、通常ならば見逃すようなリスク案件を特定するために、早期警報システムを構築した。その結果、保険請求の急増による損失を回避することになった。

 第3に、不確実性への理解を重視することは、組織に実験を迫ることになる。

「ほとんどの組織では、"実験して学ぶ"とは実質的に、"下手にいじって、期待する"という意味でしかない」と、ある小売企業の販売リーダーは指摘したことがある。彼の会社はそうではなく、大規模な変更を実施する前に、計量アナリストのチームとカテゴリーマネジャーが協力して、自分たちのアイデアを統計的に厳密な対照実験にかけている。

(6)概念実証は派手で不安定なものではなく、シンプルかつ堅牢にする

 アナリティクスでは、現実的なアイデアよりも「有望な」アイデアのほうがはるかに多い。両者の違いは、企業が概念実証を経て商品化を試みる段階まで、えてして明らかにならないものだ。

 ある大手保険会社は社内でハッカソンを開催し、オンラインでのプロセスを見事に向上させた勝者を称えた。しかし結局、そのアイデアをお蔵入りにした。基幹システムに高くつく変更を要することが見込まれたからだ。優れたアイデアをこのような形で潰すことは、組織の意欲低下を招きかねない。

 もっとよいアプローチは、「商品化の実現可能性」を核とする概念実証を考案することだ。そのための効果的な方法が一つある。最初に、「業界水準に達してはいるが、非常にシンプル」な何かをつくることから始め、のちに洗練度を上げていくというやり方だ。

 データ製品を扱う某社の例を見てみよう。大規模な分散型のコンピューティングシステムに新たなリスク測定モデルを実装するために、同社はまず、エンドツーエンドで機能する非常に基本的なプロセスを導入することから始めた。小規模なデータセットが、ソースシステムからシンプルなモデルを経由して正しく流れ、その後エンドユーザーへと送られた。

 ひとたびこの環境が整い、全体の一貫性が維持されていることがわかると、同社は各要素を個別に向上させることができた。データ量の増加、モデルの洗練化、ランタイム性能の向上などである。