(1)データドリブンの文化を築くには、組織の最上部から始める

 強固なデータドリブンの文化を持つ企業では、経営幹部がたいてい、「意思決定はデータに根差していなければならない」という期待を設定する。それを新しくも珍しくもなく、当然のこととして求めるのだ。そして、幹部みずからが模範を示す。

 あるリテール銀行では首脳陣が顔をつき合わせ、商品のリリースについて決定を下すために、市場での対照実験から得たエビデンスを精査する。ある大手ハイテク企業の上級幹部らは、会議の冒頭30分間、企画案の詳細な要約と、その裏づけとなるファクトに目を通すことで、エビデンスにもとづいて動くことができている。

 こうした慣行は、組織の下方へと伝播する。自分の企画を真剣に受けとめてもらいたい従業員は、上級幹部に伝達する際、データを重視する彼らの流儀と言葉遣いに合わせる必要があるからだ。トップにいる小数が模範を示すことで、会社全体の規範を大きく変えることができるのだ。

(2)測定指標を慎重かつ巧妙に選ぶ

 何を測定し、どの測定指標を使うべきか――これをリーダーが巧妙に選ぶことで、従業員の行動様式に大きな影響を及ぼすことができる。

 ある企業が、競合他社の価格動向を予測することで利益を得られる、と仮定してみよう。この場合に適した指標は、経時的な予測精度である。したがって、担当チームは継続的に、価格変化の度合いと方向について明確な予測を立てる必要がある。そして、予測の精度も追跡・記録すべきだ。そうすれば着実に向上していくはずである。

 別の例として、ある電気通信会社は、自社のネットワークが重要顧客に最高のユーザー体験を提供するよう、万全を期したいと望んだ。しかし、同社はネットワークのパフォーマンスに関して、集合的な統計しか収集していないため、どの顧客が何を提供され、どんな質のサービスを体験しているのかについて、ほとんどわからない。

 そこで、顧客体験に関する詳細な指標を設けたところ、ネットワークのアップグレードが消費者に与えるインパクトを、定量分析できるようになった。分析に必要だったのは、データの来歴と、消費を通常よりもかなり厳密に把握することのみであったが、まさにそれこそが核心だったのである。

(3)データサイエンティストを分離しない

 データサイエンティストは往々にして、社内で隔離されているため、彼らと事業リーダーは互いのことを知らなさすぎる。

 アナリティクスは事業の他の部分と切り離されたままで運用しても、存続できず価値提供もできない。この問題にうまく対処している企業はたいてい、2通りのやり方で成功している。

 1つ目の手段は、事業とデータサイエンティストの間にある、すべての境界の風通しをよくすることだ。あるグローバルな大手保険会社は、データサイエンティストをセンター・オブ・エクセレンスに配属後、現場職に転任させて、より広い規模での概念実証(PoC)をさせる。その後、再びセンターに戻ることも可能にしている。

 商品取引を営む某グローバル企業は、アナリティクスをより洗練させるための新たな役割を、さまざまな職能・事業部門に設け、それらをセンター・オブ・エクセレンスの管轄下に置いている。

 結局のところ、「個々の存在」よりも「原則」のほうが重要なのだ。この場合の原則とは、分野ごとの専門知識と技術的ノウハウの融合である。

 先端的な企業が用いている2つ目の手段は、データサイエンスを事業のほうに引き寄せるだけでなく、事業もデータサイエンスのほうに歩み寄るというものだ。その主な方法として、従業員に対し、プログラミングが読めるようになること、そして定量分析に関するトピックを概念的に理解できるようになることを求めている。

 上級リーダーは機械学習のエンジニアとして生まれ変わる必要はない。だがデータ中心の組織のリーダーであれば、データの言語に無知なままでいてはならない。