苦難をバネにして意義を見出す

 シルバーとアーダーンの先を見越した対応は、特別な才能というより、歴史の偶然なのかもしれない。

 新型コロナの第一報がシルバーに届いたのは、長きにわたる彼のメンターであった元NBAコミッショナー、デイビッド・スターンの追悼文を書いていたときであったという。また、元スター選手コービー・ブライアントと他8名のヘリコプター墜落による突然の死から、間もない時期でもあった。

 これらの出来事は新型コロナと無関係だが、シルバーを深く考えさせていたのだろう。そうした事情も相まって、彼は肉眼のレンズでもウイルスの新たな脅威が見えたのかもしれない。

 同様にジャシンダ・アーダーンも、3月は沈鬱な思いを抱いていた。クライストチャーチのモスクで51人が殺された、ニュージーランド史上最悪の銃乱射事件から1周年を迎えていたからだ。

 権力の座にいる人はたいてい、大きな苦難を見てきたり、喪失を経験したりしている。そうでない場合でも、少なくとも彼らのアドバイザーは、そうした経験があるはずだ。にもかかわらずあまりに多くのリーダーが、新型コロナが勢いを増す危機的な日々の中で、不評かもしれない措置を断行できなかった。

 自分はプロフェッショナルらしくあろうと努めていたのだと、彼らは主張するかもしれない。理性と冷静さを保ち、個人的な感情を持ち込まず、好機をうかがっていたのだ、と。だがアーダーンとシルバーの事例は、その反対のアプローチを示唆している。

 常に大局を見据えて、そこに意義を置くこと。そして、人の命を統計上でのみ区別したり扱ったりしたくなる衝動に、抵抗すること。これらによってリーダーシップは強くなるものと、筆者らは考えている。

 不確実で変化の激しい危機におけるリーダーシップとは、他者の身になってその胸中を感じ取れるようになること、つまり共感を持って導くことである。おそらく今後数週間のうちに、このパンデミックの悲劇的な規模ゆえに、多くのリーダーは共感を強めることになるだろう。

 とはいえ規模の甚大さは、麻痺にもつながる。リーダーに課せられる義務は、みずからを他者の困難な立場に置いて共感を持ち、知性を駆使して考えることだ。そして権力者としての自身の地位を使って、すべての人々が前に進めるよう道を切り拓かねばならない。

 歴史的な規模の危機は、歴史に残る名声をリーダーにもたらすかもしれない。ただし、けっして簡単にはいかない。


HBR.org原文:What Good Leadership Looks Like During This Pandemic, April 13, 2020.


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