前兆が見えにくく、潜在的な損害が大きいとき、リーダーは経営学者がいう「不明瞭な脅威」に直面する。

 人間は、脅威は小さくあってほしいという願望を持っており、あたかも実際にそうであるかのように行動しようとする。

 2003年に起きたNASAのコロンビア号爆発の惨事から、2008年の金融システム崩壊までさまざまな失敗が浮き彫りにするのは、リーダーに突きつけられる、不明瞭な脅威に特有の課題である。すなわち、認知バイアス、集団力学の機能不全、組織的圧力が、リスクの軽視と行動の先送りを促し、しばしば破滅的な結果へと至らしめるのだ。

 軽視と先送りという、人間の生来の性質を抑え込むには、ある種独特のリーダーシップが必要だ。しかし、あまりに多くのリーダーが、すべては順調だと請け合い、楽観的なメッセージを発しようとする。

 不幸にも、現在の悲劇的状況ではそうしたやり方が、防げたはずの死を招いている。その数がどれほどの規模か、けっして正確には数えられないだろう。

 これはリーダーにとって、避けられない道ではまったくない。筆者らはシルバーとアーダーンの例にもとづき、このかつてない危機に臨むリーダーのために4つの教訓を導き出した。

(1)緊急に行動する

 あらゆる不明瞭な脅威につきまとう、十分に立証されてきた悪しき問題の一つは、さらなる情報と明確性を待ってしまうという(無理からぬ)傾向である。

 意思決定を先送りにすることのリスクは、往々にして目に見えない。だが危機に際しては、「そのうち明確性が高まれば、対処は無用だと判明するだろう」という、はかない希望を胸に、貴重な時間を無駄にすることは危険である。パンデミックが指数関数的に拡大している状況では特に、意思決定が1日遅れるごとに被害はいっそう大きくなる。

 先延ばしという生来の傾向を抑え込み、緊急に行動する――これはつまり、切望している情報がすべて揃わなくても、渦中に飛び込むということだ。

 アーダーンとシルバーの行動は早かった。似た状況下にある他のリーダーよりも、はるかに早く動いた。今後の見通しが明らかになるはるか前に動いた。これは、アーダーンが公の場で述べた「厳しく、早く」対処するという明確な選択だ。

(2)透明性を持ってメッセージを伝える

 悪いニュースを伝えることは、報われない行為である。他に先んじてそれを伝えるリーダーは、従業員や顧客や国民の士気、そして自分への支持率を下げるかもしれない。

 そのリスクをなくすには透明性のあるコミュニケーションが不可欠だが、このことは知恵と勇気がなければ理解できない。アーダーンは、国民に向けた初期の声明で次のように述べた

「この急激な変化のすべてが、不安と不確実性を生むことを私は理解しています。私たちの生活様式が変わるのですから、当然です。だからこそ今日は、方針を可能な限り明確にお話しします。一致団結してウイルスとの闘いを続けるうえで、皆さんが何を想定しておくべきかを」

 この発表以降、アーダーンは定期的に国民に語りかけており、なかには明らかに自宅で撮られたスウェット姿のものもある。

 シルバーも同様に、意思決定のプロセスが進むたびに、NBAの組織全体に向けて連絡メモを矢継ぎ早に連発した。ESPNの報道によれば、3月19日の時点で実に16通もの「中断に関するメモ」が全チームに送られたという。

 透明性のあるメッセージとは、現実を正直で正確な説明によって伝えることだ。自分が何を知っているのか、何を予測しているのか、それが人々にとって何を意味するのかについて、人として可能な限り明確に伝えることである。

 人々に理解できる形のメッセージにすることが不可欠だ。アーダーンが、すでに馴染みのある4段階の警戒システムを踏襲したのもその例である。

 ただし、希望がまったくないメッセージは、人々を自暴自棄にさせるだけなので避けねばならない。メッセージのどこかに、人々がエネルギーを注ぐ対象となるような、希望が持てる将来展望を含めるべきである。なぜなら希望がなければ、決意を固めることはできないからだ。