慈悲以外のことで、私たちが話し合った内容を紹介しておこう。筆者の学生と同じような不安を感じている人は、これを実践することをお勧めする。

(1)コードを実践する

 筆者がメディカルスクールで「コードを実践する」(たったいま心臓が止まった人を蘇生するという意味)ことを教わったとき、まず一息ついて、自分の脈を取るようにと言われた。この経験から、何か思い切ったことをするときは、立ち止まって深呼吸をしてから始める習慣ができた。

 意識的な小休止は、脳の思考を司る部分を「オンライン」にしたままにするので、物事を妨げるのではなく、助ける行動を取れるようになる。ストレスフルな状況で小休止を取ると、自分を冷静な感情に置くことができる。その小休止は、人によって3回深呼吸をすることだったり、手や足などニュートラルな体の部位に意識を集中することだったりする。

 マインドフルネスを実践したことがない人の場合は、胸や腹など、自分がふだん気にしている体の部位に意識を集中すると、かえってネガティブな気持ちが強くなり、不安を悪化させることが多い。だから、もっとニュートラルな気持ちになれる体の部位に自分の感情を結びつけることが、不安を大きくせずに、いまこの瞬間に意識を置き続ける助けになる。窓の外の木や自然に目を向けたり、周囲の音に耳をすませたりするなど、意識を屋外の物に向けることも、心を落ち着ける助けになる。

 こうしたマインドフルネスの実践は、誰でも10秒でできる簡単な方法だ。心がそわそわしてきたと思ったら、それは社会的伝染の兆しだ。そんなとき10秒間のマインドフルネスを実践すれば、心のくしゃみを防ぐことができる。

(2)自分の「静寂」に触れる

 簡単なマインドフルネスの実践に加えて、周囲の人が意図せず社会的伝染を広めている中で、一瞬立ち止まり、静寂の感覚を味わうのもいい。これをやると、静寂は不安よりもずっとよい感覚であることがわかるだろう。

 この気づきを利用して、脳内の報酬を司る部分をうまく活用しよう。選択肢があるとき、人間の脳は、最も多くの報酬をもたらす行動を取るようにできている。静寂は不安と比べると、明らかに大きな報酬をもたらす選択肢だ。それを頻繁に実践するほど、静寂は例外ではなく、日常になる。

 周囲を見回すと、あなたの静寂が伝染していないだろうか。恐怖ほど伝染力はないかもしれないが、何度も繰り返すと、あなた自身の脳をリフレッシュしてくれるだけでなく、誰もが協力しあっている現実が見えてきて、不安に対する自然免疫がつくようになる。

(3)1日1日を精一杯過ごす

 人間の脳は、未来に向けて計画を立てるようにできている。でも、このパンデミックがどうなっていくかは、まだ情報が不足していて、半年後の計画も立てられない。

 もし自分の脳が、未来のことを考えて心配モードに入っていきそうになったら、マインドフルネスをもたらす小休止を取り、その日を精一杯過ごすことを思い出そう。今日やるべきことを終わらせ、明日のことは明日になったら考えればいい。物事は身近になるほど、はっきり考えられるようになるものだ。

 たとえば、いま空腹か喉が乾いているかどうかは、自分の状況をかえりみてすぐに判断できる。そして、その情報に基づき、何かを食べるか、あるいは飲むかを決定できる。

 心の静寂を保つためには、その日を精一杯に生きることを思い出すだけでは不十分で、もっと短いスパンで物事を考える必要があるかもしれない。つまり、「この1時間は何をすべきか」を自問しよう。必要ならば1時間単位、1分単位、あるいは一瞬単位で何をするべきか考えてもいい。

 不確実性は、不安というウイルス的な媒介物によって社会的伝染を引き起こす。そのことを知り、簡単なマインドフルネスの実践を組み合わせれば、私たちは精神的なつながりを維持し、病原菌ではなく静寂を広めることができる。

「本当に?」と疑念を抱いたときは、ここに紹介してきたマインドフルネスの訓練を実践して、心に静寂をもたらし、いま、この瞬間に集中し、それから前に進むといいだろう。


HBR.org原文:Anxiety Is Contagious. Here's How to Contain It, March 18, 2020.


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