共感という課題

 共感とは、他者の感情を認識し、それに共鳴する能力であり、優れたリーダーシップに不可欠だ。しかし、危機的状況では、共感は正しい行動の障害になりうる。共感が敏捷性を低下させてしまうのだ。

 ベンチャーキャピタルのエクセルベンチャー・マネジメントでマネージングディレクターを務めるフアン・エンリケスは、昨今の危機において、リーダーたちにこうアドバイスした。

「外科医のように考え始めなければならない。外科医は『これは痛むし、今後2ヵ月間の回復も痛みを伴う』とは考えない。外科医は『患者の命を救うか、状態をいまよりはるかに改善させるには、これがやるべき手術だ』と言う。これこそが、リーダーとしてあなたが考えるべきことだ」

 リーダーは多くの場合、レイオフ、給与削減、サイトの閉鎖など、人々の生活に悪影響を及ぼす厳しい決断を迫られる。共感する能力を持つ私たちは、他者を傷つけるのを好まない。そして、共感できるからこそ、私たちはやるべきことをしない危険にさらされている。

 共感によって機能不全になることの解決策は、慈悲の心だ。共感と慈悲は、心理的、感情的、神経学的な観点で大きく異なる。

 共感は他者が苦しんでいるのを見ると湧き起こるが、自分の内側にとどまりがちだ。一方で、慈悲はより建設的だ。共感から始まり、支援しようとする意思を伴って外に向かう。

 慈悲の行動を知るため、ユニリーバCEOのアラン・ジュープによる行動と、最近の発言について考えてみたい。

 ジュープは新型コロナウイルスの感染者や医療従事者に深い共感を示している。そして彼は、その感情を非常に明確で大胆な行動計画に転換した。

 1億ユーロ相当の製品を世界各地に寄付し、小規模小売業者や一部のサプライヤーに対して5億ユーロのキャッシュフロー支援を実施。さらに、米国の14の自社工場で生産するすべての生活必需品を地域パートナーに寄付する日として、5月12日を同国における「サービスの日」と宣言した。

 あなたのリーダーシップにより多くの慈悲をもたらし、さらなる敏捷性を解き放つため、誰かと一緒にいるときはいつも、このシンプルな質問を自問する習慣をつけてほしい。「この人にとって、私はどう役立てるのか」だ。このシンプルな質問を日に何度も繰り返すことで、考え方や行動が徐々に変化していく。

 リーダーは危機的状況だけでなく、どんな状況においても、集中と認識、無私、慈悲によって上記の3つの課題を克服することが、思慮深いながらも敏捷に行動する助けとなるはずだ。


HBR.org原文:Perfectionism Will Slow You Down in a Crisis, April 16, 2020.


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