壮大な実験

 新型コロナウイルスの感染流行を受けて、世界中で行われている実験は、これまでキャンパスで大学が提供してきた数々のサービスと、コーセラなどの超低コストのオンライン教育サービスの違いに光を当てることになりそうだ。2つの教育方法に、それぞれどのような利点と欠点があるかが見えてくるだろう。

 数年前、カーン・アカデミー、コーセラ、ユーダシティー、エデックスなどのMOOCsが、対面型大学教育を葬り去ると予測した人たちがいた。デジタルテクノロジーが電話交換手や旅行代理店の仕事を奪ったのと同じことが起きる、という発想だった。しかし、これまでのところ、対面型の大学教育は滅びていない。

 だが、いま行われている実験を通じて、4年制の対面型大学教育の牙城が、いよいよ揺らぐのかもしれない。さまざまな要因により、高等教育の世界に大激変が近づいているように思える

 その要因の最たるものは、高くなる一方の学費だ。すでに大半の家庭は、子どもの大学授業料を負担できなくなってきている

 新型コロナウイルス危機は、高等教育の現状を突き崩す大激変の引き金になる可能性がある。いま私たちが、どのように新しい教育方法の実験を行い、新しいやり方をどのように試し、その結果を記録して理解するかによって、オンラインを活用した教育が発展していくのか、またどのように発展するのかが決まる。

 現在行われている実験は、米国の政治的議論をより充実させる効果もありそうだ。一部の政治家は、大学教育の無償化を公約に掲げてきた。もしかすると、この実験により、大学教育の学費を大幅に引き下げる道が開けるかもしれない。

 今回の危機が落ち着いたあとは、すべての学生が教室に戻り、これまでと同じやり方を続けることが最善なのか。それとも、そのときまでに、もっと優れた方法が見つかっているのだろうか。


HBR.org原文:What the Shift to Virtual Learning Could Mean for the Future of Higher Ed, March 31, 2020.


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