自分と仲間の心身の状態に気を配る

 危機は、あらゆる人に犠牲を強いるものだ。誰もが疲弊し、燃え尽きてしまう恐れがある。愛する人を失った人は、打ちのめされるだろう。

 したがって、大きな混乱が起きているときのリーダーの最大の役割の一つは、仲間の心身の状態を把握し、必要ならば対策を講じることだ。

 このときに重要なのは、まず自分の状態を把握することだ。ある企業幹部が、今回の新型コロナ危機の前に、次のようなことを言っていた。「リーダーであるあなたが揺らぐと、すべてが揺らぐ。組織のミッションなど、すべてがダメージを受けやすくなる」

 だから、現在のような困難な時期には、自分の心、体、精神によく気を配ること。いつであれば自分は仕事に集中できて、生産性の高い仕事ができるのか、いつ休憩が必要なのかを知ろう。

 健康な食生活を送り、十分な睡眠を取り、定期的に運動し、屋外に出て(ただし、人とは十分な距離を置いて)、パートナーや子どもやペットと直接触れ合い、友人や親戚とバーチャルにつながり、1日に少なくとも2回(それぞれ30分以上)は電子機器から離れること。ほかにも、心身の健康を助ける方法を実践しよう。

 次に、あなたが他者に期待する行動の模範をみずから示そう。身振りや手振り、言葉、そして行動によって、自分たちが断固たる決意と勇気を持って前進しているというサインをチームに送るのだ。

 定期的にスタッフの「体温」を測ることも重要だ。つまり調子はどうか、どんな気分か、必要としていることはあるかなどと声をかける。すると、スタッフ同士も互いにそうした声をかけるようになる。

 あなた自身が十分な休養を取り、充電する時間を確保していることを知らせ、スタッフにも同じようなことをするように促そう。ニューヨーク州のクオモ知事は、住民に次のように語りかけている。「散歩に行くといい。それから、お母さんに電話をしよう」

 スタッフの士気を高めるためには、感謝の気持ちをはぐくむという方法もある。たとえば毎日、自分が感謝することを3つ書いてもらう。また、これまで述べてきた3つのポイント(激励する、役割を与える、試行錯誤を重視する)に定期的に立ち返るといいだろう。

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 3月末、筆者の最も愛すべき友人の一人であるスティーブンが、新型コロナウイルス感染症で死亡した。スティーブンと妻(やはり新型コロナで入院中)は、2009年に筆者が癌で化学療法を受けたとき、住み込みで看病をしてくれた。その後も、筆者の調子が悪いときは様子を見に立ち寄ってくれたし、祝祭日を一緒に過ごすこともあった。この夫妻は筆者の人生の輝ける光であり、辛い時期に励まし、元気づけてくれた。

 スティーブンの死を知ったときは、悲しくて胸が張り裂けそうだった。しかし、涙に暮れる中でも、スティーブンの励ましの声が聞こえてくるような気がした。「ナンシー、君は自分が思っているよりも強い人間だ。君ならこれを乗り切れるはずだ」と。これはいま、すべてのリーダーが仲間に伝えるべきメッセージだ。

 この危機のときに、自分と仲間をどのように管理できたかは、これから長い間、記憶されることになるだろう。あなたとあなたのチーム、組織、そして私たちの社会は、どのようにつながり、粘り強く耐えて、前進を続けるのか。今回の経験から、私たちはいかにもっと強くなれるのかが問われている。


HBR.org原文:Real Leaders Are Forged in Crisis, April 03, 2020.


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