試行錯誤を重視する

 強力なリーダーは、危機を乗り切るためには、不透明で混乱した状況に慣れなくてはいけないことに迅速に気づく。このようなリーダーは、危機を乗り切るシナリオは存在しないと気づき、混乱の中でも一歩一歩、歩みを進め、状況が変わったり新しい情報が入ったりすれば、その都度、方向性を調整し、対策を改善し、新たな指示を出す。

 勇敢なリーダーは、その過程で自分がミスを犯すことも理解していて、ミスを犯したならすぐに態勢を立て直す。すなわち、前進しながら学習するのだ。

 南極探検中に遭難したシャクルトンも、エンデュアランス号で冬を越しながら、次々と変化する状況に柔軟に対応し続けた。まず、船が流氷に囲まれると、みずからのミッションを探検から生き残りにシフトさせた。やがて船内に居住することが難しくなると、流氷の上にキャンプを設置するよう船員たちに命じた。

 さらに、無人島にたどり着いたものの、そこには救援が到達する可能性がゼロであることを見て取ると、3隻残っていた救命ボートの1隻にみずから乗り込み、約1300キロ離れた別の島(そこなら助けが得られることがわかっていた)まで航行した。

 4ヵ月後、3度にわたる失敗を乗り越えて、シャクルトンはついに救援隊を率いて、船員たちが待つ無人島に戻った。命を落とした者は一人もおらず、シャクルトンは全員を故郷に帰すことができた。

 1962年のキューバ危機のとき、ジョン F. ケネディ大統領も同じような柔軟性を示した。米国とソ連の関係が核戦争寸前にまで緊迫していたとき、ケネディは一つの方針や行動に固執することなく、米国側の選択肢を増やす提案をするよう少人数の顧問団に命じた。

 あなたも部下たちに、組織としても個人としても、前進しつつ学習し、新しいやり方を試し、ときには失敗することを予測しつつ、すぐに態勢を立て直し、一緒に未来をつくり上げることを期待していると告げるべきだ。

 実際、新型コロナ危機は、ソーシャル・ディスタンシングや、来たる景気後退を含め、あらゆるタイプの組織とチームがみずからの強みと弱みを理解し、スタッフをやる気にさせる方法や、みずからの存在意義を改めて理解する大きなチャンスである。