役割と目的を与える

 本物のリーダーは、大きなコミュニティのために行動するよう、部下に命じる。それぞれに任務を与えるのだ。

 エイブラハム・リンカーン大統領は南北戦争のとき、北部州の男たちに戦うよう促したし、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、1950~1960年代に公民権運動が盛り上がったとき、座り込みや行進などの形で人種差別に抗議するよう支持者に呼びかけた。

 フランクリン・ルーズベルト大統領は大統領就任演説で、取り付け騒ぎが起きないように、銀行からの預金引き出しを控えるよう国民に訴えた。また、ファーストレディのエレノア・ルーズベルトは第二次世界大戦中、男たちが戦地に赴く中、女性たちに工場で働くよう呼びかけた。

 20世紀初めに南極探検隊を率いたアーネスト・シャクルトンのリーダーシップも手本になる。

 1915年、探査船エンデュアランス号が流氷に囲まれて身動きが取れなくなると、シャクルトンは船員たちに通常業務を続けるよう命じた。水夫はデッキを掃除し、科学者は標本を集め、それ以外の船員は食料調達(つまり狩猟)を任された。流氷の真ん中で厳しい冬を越すためには、規則正しい生活と任務によって、先行きが不透明な状況にも一定の秩序をつくることが重要だと、シャクルトンは理解していたのだ。

 現在の危機でも、リーダーにはシャクルトンのような行動が求められている。すなわち、部下たちに方向性を示し、彼らの任務の重要性を思い起こさせるのだ。

 政府機関や病院、薬局、食料品店、さらには食品や医療機器の工場、報道機関、科学研究所、貧困層等を支援するNGOなど、必要不可欠なサービスを提供する組織の場合、その存在意義はわかりやすい。同時に、そのオペレーションに関わる人それぞれが果たす役割の重要性も強調すべきだろう。

 それ以外の業種では、すべてのステークホルダーがこの危機を可能な限りうまく乗り切るのを支援することが、新たなミッションになるだろう。ということは、筆者らの場合、ハーバード・ビジネス・スクールや『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌で、本稿に示すような教訓を教え、伝えることがミッションとなる。

 作家のカレン・ゲッテル・シューメーカーは、家族が昔から経営してきたネブラスカ州のトラック停車所で、新型コロナウイルス対策の必需品を運ぶトラック運転手たちが一息つけるサービスを提供することに、全力を挙げている。

 たとえ「自分たちに何ができるかわからない」と思っても、最小限の形でよいから、他者を助けることを優先しよう。筆者は、人生できわめて困難な経験をしていたとき、ハーバード大学記念教会のピーター・ゴメス牧師の説教を聞いて、他者のために働くことが、人生を変えるようなパワーを与えてくれることを思い出した。

「(周囲で)混乱や災難が起きているときは、それに耐えるだけでなく、乗り越えるために、みずからの内なる強さを見つけなければならない」と、ゴメス牧師は説いた。「誰かが何かを与えてくれないかと見回すのではない。自分がすでに持っているものを見つめ、自分が何を与えられるかを考えるのだ」

 たとえ小さな形でも他者を助けると、私たちの恐怖は収まり、集中力が研ぎ澄まされる。