人々の不安に理解を示したうえで、激励する

 米国が大恐慌の最中にあった1933年に、フランクリン・ルーズベルト大統領が大統領就任演説で述べた一節は、いまも名言として語り継がれている。「我々が恐るべき唯一のことは(中略)恐れそのものである」

 そのうえでルーズベルトは、米国の底力を国民に思い起こさせた。「我々が賢明かつ勇敢に対峙すれば、これは解決できない問題ではない。方法はたくさんある。しかし、議論しているだけでは解決できない。我々は行動しなければならない。それも迅速に」

 一方、英国のウィンストン・チャーチル首相は1941年、ナチスの猛攻を前に国民を激励した。「我々は諦めないし、ひるむことはない。弱気にならず、疲れることもない。突然、戦闘の衝撃に見舞われても、また長期にわたる警戒と労苦を強いられても、へこたれない。我々に武器を与えよ。されば仕事を成し遂げるであろう」

 ビジネスの世界では、たとえば『ワシントン・ポスト』紙の発行人キャサリン・グラハムのようなリーダーがいた。グラハムは1971年、みずからの恐怖を克服して、ペンタゴン・ペーパーズ(米国がベトナム戦争に本格介入するきっかけとなったトンキン湾事件は、米国政府の捏造だったとする極秘報告書)の掲載を決断。国家機密だとして掲載差し止めを要求する政府に対して、報道の自由を守る決意を示し、編集者や記者の調査報道をサポートした。

 最近では、大手スポーツ用品店ディックス・スポーティング・グッズのエド・スタックCEOのリーダーシップが有名だ。近年、学校を舞台とする銃乱射事件が相次いでいることを受け、スタックはディックスで銃の販売をやめることを決断。銃規制反対派の反発や、業績への影響を懸念する取締役会や経営幹部を見事に説得した。

 現代のリーダーは、残酷なほどの率直さと、信頼できる希望の両方を提供できなくてはいけない。すなわち、地域や会社やチームが直面する課題を明確に提示するとともに、自分たちには日々直面する脅威に対応するためのリソースがあると、安心させる必要がある。

 それには決意、連帯感、強さ、目的意識、人間性、思いやり、そしてレジリエンスを持たなければならない。従業員のほとんどは、自分の健康や経済状態、そして雇用を心配していることを理解しよう。また、彼らの不安を理解していること、そして一緒に協力すれば、この苦難を乗り越えられることを伝えよう。

 まさに、いまの危機を乗り越えるロールモデルとしては、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事や、ミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事がいる。

 どちらも、危機のときに求められるリーダーシップを、リアルタイムで教えてくれるようなものだ。すなわち、自分たちの州がいかに重大な問題に直面しているかを住民に説明し、新型コロナウイルス対策に割り当てられているリソースを示し、人々に力強さと思いやりのある行動を呼びかけている。

 平和主義者だった故ウィリアム・スローン・コフィン牧師の言葉を引用して、部下たちを激励するのもいい。「勇気はきわめて重要な美徳だ。死ぬほど怖がるか、怖いからこそ命を尽くして行動するかは、その人次第だ」