いまから38年前、シカゴで毒物入りのタイレノールを服用して7人が死亡した。例外的で局所的な出来事だったが、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、ただちにすべての店舗からタイレノールの全製品を回収。それ以上は1人も死者を出さないために、巨額の損失を引き受けた。

 この判断は、いまなお語り継がれている。当時は生まれていなかった人々も、ビジネススクールのケーススタディで学んでいる。

 多くの優れた大企業は普段から、社会的なパーパス(意義)や価値観を持っていることや、従業員を含むステークホルダーをいかに大切にしているかを語っている。いまこそ、その言葉を実行に移すときだ。経営陣が会社の価値観を守るために、短期的な収益を犠牲にするような決断を下したときに初めて、従業員は自分の会社には意義と明確な価値観があると心から信じる。

 米国ドラッグストアチェーン大手のCVSはヘルスケアに深く関与する意思表示として、タバコの販売中止を決断し、年間20億ドルの売上げを手放した。

 私のコンサルティング企業FSGは2008年の景気後退に際し、レイオフではなく、スライド式の報酬カットを行った。報酬が最も多い人は大幅に削減し、最も少ない人はわずかしか減らさなかった。

 10年以上が経ったいまも、社員は当時の決断を覚えている。そして今回も、私たちは同じ決断を下した。

 企業の経営陣が、投資家や銀行から現金を節約して損失を減らすように圧力を受けていることは、私も理解している。しかし、投資家や銀行員がいますぐ生活に窮することはない。貯蓄が底をつきかけた退職者も、パニックに陥って株を売らない限り、株価はいずれ回復するだろう。

 企業は、リストラや製品の欠陥、買収の失敗などのコストは、いつでも償却できる。新型コロナウイルスのパンデミックに伴う損失処理は、誰もが納得するだろう。

 そこで、企業が従業員や小規模の供給業者、医療従事者、コミュニティを手助けするためにできることを提案したい。