社会的距離と社会的孤立は違う

 朗報もある。さまざまな病気にまつわる状況について研究している科学者らが、スティグマの軽減とレジリエンス(再起力)の強化の方法など、新型コロナウイルスの流行時にスティグマに対処する手段を特定した。これにより、人々がスティグマにさらされても、その負の影響を受けずにすむかもしれない。

 教育は、スティグマを取り除く最も一般的な手段の一つだ。アジア系米国人が新型コロナウイルスに感染している可能性が高いといった、有害な固定観念を払拭することができる。

 新型ウイルスに罹患した地方および国の指導者らは、この病気の一般化を促すために自身の診断結果を公にすべきだ。米国プロバスケットボールリーグNBAのスター、マジック・ジョンソンがHIV陽性を公表したときには、HIV検査の受診率が全米で劇的に上昇した

 新型コロナウイルス感染症に罹患した著名人によるソーシャルメディアの投稿も、タブーの払拭に役立つだろう。私は同僚や友人に、こう言い続けている。「トム・ハンクスとリタ・ウィルソンが新型コロナウイルス感染症になるなら、誰しもなる可能性がある」

 企業のリーダーにとっては、組織の一体性、受容性、多様性についての価値観が、新型コロナウイルス感染者にも配慮していることを明確にする機会だ。差別禁止政策の強化が必要になるケースもあるかもしれない。新型コロナウイルス感染症を完治した人はもはや他者に感染させることはなく、他の従業員と異なる扱いを受けるべきではない。

 リーダーはまた、従業員が感染した場合の報告と対応に関する、明確で信頼性の高いガイドラインを作成するのもいい。そうすれば、従業員は体調を崩したときに安心して報告することができ、回復すれば復職できると確信できる。

 企業は、スティグマやその他のストレス要因への耐性を高める健康プログラムにも投資すべきだ。たとえば、マインドフルネスの活動は広範なストレス要因に対するレジリエンスの向上に役立つ。そうした活動を紹介する、さまざまなプラットフォームもある。

 リーダーシップは重要だが、私たち全員が、パンデミックの最中にスティグマを排除するうえで重要な役割を担っている。実際、スティグマを軽減し、レジリエンスを向上させる最も効果的な手段の一つは、単純な社会的支援だ。

 働く人々は同僚と状況を確認し合うために、バーチャルなコーヒー休憩やランチ、勤務後の交流を計画することもできる。隣人、特に病気の人に電話やメールをして近況を報告し、ソーシャル・ディスタンシングの措置が解除されたら再会しようと伝えてもいい。

 私たちはまた、誰もが直面しているメンタルヘルスの悩みについて、率直に話し合うべきだ。スティグマを含むストレス要因について他者と話すことが、積極的な対処や精神的な健康を促進する。

 スティグマは病に対する進化した反応だが、不可避ではない。スティグマは私たちを分裂させ、対立させるが、パンデミックは私たちがいかにつながりあっているかを再認識させる。このウイルスに対しては誰もが脆弱であるということが、連帯の源だ。

 私たちの敵は新型コロナウイルスに感染した人ではなく、ウイルスそのものであることを忘れてはならない。


HBR.org原文:Don't Let Fear of Covid-19 Turn into Stigma, April 6, 2020.


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