スティグマがもたらす損害

 スティグマが罹患した人々の精神的および身体的な健康に害を及ぼすことは、十数年にわたる私の研究でわかっている。

 スティグマは、社会的拒絶、うわさ話、身体的暴力、サービスの拒否といった形をとる。他者からのスティグマを経験すると、抑うつ症状、ストレス、薬物乱用の増加につながる恐れがある。

 驚くべきことに、他者からのスティグマを実際に経験しなくても、スティグマの負の影響を受ける。たとえば、病気の人がのけ者にされたり、病気を基準に判断されたりするのを目撃すると、他者からのスティグマを予想するだけで不安やストレスにつながってしまう。

 病気に感染した人は、自分は何か悪い行いをした、もしくは悪い人間なのだというふうに、スティグマを内面化する恐れもある。

 また、新型コロナウイルス患者の多くが、医学的な観点から隔離されていることが問題を悪化させる。隔離されている患者は、苦痛を抱えるリスクが高いことが示されている。

 スティグマは病気の人だけでなく、病気と関わりのある人や、関わりがあるとされる人々にも影響を与える。患者の家族や、患者の治療にあたる医療従事者らは、感染症流行時に他者からのスティグマを経験するリスクが高い。新型コロナウイルス感染症においては、アジア系米国人や、感染流行地域から戻った人々がスティグマの対象になっている。

 パンデミックの最中に誰かにスティグマを負わせることは、すべての人にとって脅威となる。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、エボラ出血熱、ハンセン病、その他の感染症の流行に関する研究では、スティグマが疾病の検査や治療を妨げることがわかっている。

 病気になると社会的に敬遠されるのではないかと懸念する人は、症状が出ても検査治療を受ける可能性が低くなる。公正世界仮説により、自分が罹患している可能性を信じないかもしれない。自分は病を回避するために予防策を講じたよい人間なのだ、という具合だ。