仕事と私生活との間に境界線を引くことは、特にメンタルヘルスのためには不可欠だと多くの研究が示している。しかし実際にそうすることは、どんなに恵まれた環境でも容易ではない。主な原因は、知識経済が「理想的な働き手」の定義を根本的に変えたからである。

 我々の研究で明らかになったことがある。働き手はしばしば無意識のうちに、上司や同僚、部下が境界線を維持することを妨げているのである。

 勤務時間外に仕事関係のメールを送るのが、その一例だ。勤務時間外に仕事のメールを送った人は、受け取った相手が喫緊の案件ではないと理解していても、すぐに返事をしなければとプレッシャーを感じるであろうことに思いが至らない。これは、2000人以上の働く社会人が参加した、5つの調査で明らかになっている。

 新型コロナウイルスは、そのような圧力をさらに強めるだろう。通常であれば仕事と私生活を分けることを好む従業員でも、いまの状況下ではそうすることが困難になっている公算が高い。

 ほとんどの学校が閉鎖しており、託児所も利用できない場合、仕事を持つ親や低所得の働き手には負担がいっそうかかる。以前から在宅勤務を奨励している会社でも、家族がいる中での在宅勤務で従業員が直面するさまざまな問題を、簡単には解決できないかもしれない。

 では、今日多くの人々が置かれている非日常の状態で、どうすれば仕事とそれ以外の生活のコンパートメント化を続けられるだろうか。どうすれば、自宅で仕事をしているときに「家庭に仕事を持ち込まない」でいられるだろうか。いまの状況にうまく対処すべく、お互いに助け合うために企業と経営者と働き手ができることは何だろうか。

 我々の研究および広範囲にわたる研究論文に基づき、そのような疑問に対する解決策をいくつか推奨したい。