官民のコラボレーション

 中国では政府組織間の情報共有が、とりわけ地方レベルで十分になされておらず、新型コロナウイルス感染症の拡大に効果的に対応するうえで、特に初期の段階で足かせになったようである。

 中央政府はかなり以前から、データを活用してパンデミックに対応する際にカギとなるのは、アリババグループやテンセントのような巨大企業だと認識していた。これら企業は、膨大なユーザーデータをリアルタイムで収集しているため、国民の移動状況を政府にも増して把握しているかもしれない。

 新型コロナウイルス感染症の制御に向けた取り組みは、ウィーチャットのようないわゆる「スーパーアプリ」の優位性を際立たせる。ウィーチャットは2019年12月の時点でアクティブユーザーが10億人をわずかながら上回り、平均利用時間はインスタグラムの2倍以上を記録している。

 ただし、「スーパー」という称号は、収集するデータの膨大さだけによるのではない。むしろその本領は、ソーシャルメディア、インスタント・メッセージング、ペイメント、フードデリバリー、配車サービス、ヘルスケアほか、数千種類のアプリをプラットフォーム上で統合している点にあり、フェイスブックなどの羨望の的になっている。

 アプリへの依存がここまで進んだ現状は、パンデミックの発生を受けて、市民に政府命令への遵守を求める必要が生じた際に武器となりうる。

 中国でモバイル決済アプリのアリペイが大いいに頼られる状況を巧みに利用したのが、「アリペイ・ヘルス・コード」である。アリババの姉妹会社アント・フィナンシャルが先ごろ開始したこのサービスは、中国全土へと広がりつつある

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、アリペイ・ヘルス・コードはユーザーの新型コロナウイルス感染症関連のリスク度を、収集データと本人の自己申告をもとに緑(自由に移動可)、黄(7日間の隔離)、赤(2週間の隔離)の3段階で判定し、どの程度自由に移動してよいかを決める。

 これにはおおまかに述べて、2つの懸念がある。第1に、判定結果を導き出すアルゴリズムが公表されていない。「なぜアプリから隔離を指示されるのかわからない」という不満が、中国メディアに寄せられている。

 第2に、アリペイなど他のアプリとの連携によって得た、旅行歴などの膨大なユーザーデータを活用しているようなのだ。プライバシー保護の観点から、おそらく後者のほうがより深刻な懸念事項だろう。