筆者が最も最もパワフルなフレーミングだと思ったのは、英雄フレーミングだ。

 オーストラリアの映画監督ベンジャミン・ギルモアは、かつて救急隊員で、あるドアを開けたとき、誰かの命を救えるか、自分の命が脅かされるかわからない人生を送っていた。こうした不確実性を切り抜けるために、ギルモアは、自分が英雄の旅をたどっていると考える能力を身につけた。

 ギルモアは数年前、パキスタンのカイバル峠を訪問しようとしていたとき、乗っていたバイクを警察に押収されてしまった。そこで徒歩で旅を続け、その道のりでパシュトゥン人の少年に出会った。少年は将来、家族のやっている武器取引ではなく、詩人になりたいのだと言う。

 このエピソードにインスピレーションを得て、ギルモアは2本の映画を制作し、どちらも好評を得た。1本はカンヌ映画祭でプレミア上映された『Son of a Lion』で、もう1本はアフガニスタンに贖罪の旅に出る兵士を描いた『Jirga』(いずれも日本未公開)だ。

 この2本が無事完成したのは、ギルモアがいくつもの障害を乗り越えたからだ。パキスタンでバイクを没収されたときもそうだし、『Jirga』の出資者が手を引き、キャストとクルーまで失ってしまったときもそうだった。

 だが、ギルモアは諦めず、ゼロに等しい予算で傑作をつくり上げた。『Jirga』は、オーストラリアが2019年アカデミー賞外国語映画賞に出品する作品に選ばれた。

 どうしてそんなに頑張れたのかと聞くと、ギルモアは答えた。「ほとんどの人は障害に出くわすと、『止まれ』というサインだと解釈する。でも、私はそれを、正しい方向に向かっている証拠だと見なすことを学んだ」

 それだけではない。「ルーク・スカイウォーカーからハリー・ポッターまで、私たちが愛する映画は皆、苦難を乗り越える英雄の物語だ。みんな英雄を大好きだけれど、障害こそが英雄をつくるんだ」

 ギルモアはそこでひと息つくと、こう言った。「英雄になる唯一の方法は、障害を乗り越えることだ!」


HBR.org原文:You're Not Powerless in the Face of Uncertainty, March 27, 2020.


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