友人が最も共感を示したのは、フラストレーションとフレーミング(表現方法や意味付け)に関するものだった。

 オランダの化学者ベルナルト・フェリンハは「不確実性と戦おうとしても、負けるに決まっている」と言って、皮肉そうな笑いを浮かべた。それは、2016年のノーベル化学賞受賞につながる分子マシンを構築するまでに、彼がいかに多くの失敗を乗り越えてきたかを物語っていた。

「数時間か数日間、そのフラストレーションに身をゆだねるといい。そして、自問するのだ。自分はこのことから何を学べるか、次のステップは何にすればいいか、と。不確実性にはフラストレーションがつきものだが、そこから立ち直る力をつけるのだ」

 フェリンハは、不確実性に意味を与えることによって、それに対処できるようにした。行動科学の研究は、こうしたフレーミングが、私たちの行動に影響を与えることを示してきた。

 心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーは、人間は同一の事象でも異なるフレーミングをされると、損失を回避する(そしてより多くの利益をもたらす)ように見える選択肢を選ぶと指摘した。たとえば、「失敗の確率5%」と「成功の確率95%」という、ほぼ同じ内容の2つの選択肢を示されたとき、「成功の確率95%」というフレーミングを好むという。

 こうしたフレーミングはバイアスだと指摘されることもあるが、筆者が研究した人たちは、それをうまく利用して困難を乗り越えていた。

 この研究過程で、筆者がよく目にしたフレーミングと具体例を紹介しよう。

・学習:「この問題から何を学べるか」と考える。フェリンハはこのフレーミングを使った。

・ゲーム:「これはゲームなのだから、イライラするのは当たり前だ。負けても自分を責めるな。今日は負けても、明日は勝てるかもしれない」と考える。

・感謝:自分がすでに多くのことに恵まれていると認識する。米国メジャーリーグの名選手ルー・ゲーリッグは、全盛期にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症して引退を余儀なくされた。その引退セレモニーで、ゲーリッグは次のように語った。

「ファンの皆さんはこの2週間、私の不運を読み聞きしてきたことでしょう。しかし今日、私は地球上で最も幸運な男だと思っています。……私は1つの不運に見舞われたかもしれませんが、人生を捧げる価値のある多くの幸運に恵まれてきたのです」

・無作為性:「人生はランダムな出来事であふれている。私の身に起きることは、自分の行動の結果とは限らない」と考える。

 起業家のジョン・ウィンザーは、経営者としての人生を、雪崩に巻き込まれた経験になぞえらえる。そのような大惨事を回避するために、できる限りの準備や分析を重ねていたのに、突然の災難に見舞われて多くのチームメートを失った。

「ビジネスをやっていると、世界をコントロールしている気がする。でも正確には、我々は世界をコントロールするというより、世界を解釈しようとしているのではないか」。

 物事の成否は、一般に思われているほど私たち自身が原因ではない。だからフラストレーションに負けて、再挑戦を踏みとどまることがないようにしよう。