2008年の世界金融危機後に訪れた大不況の時期と似ている面もあるが(私がベスト・バイのCEOに就任したのは、同社の倒産が避けられないと思われていた2012年のことだった)、いまそれに従っておけばよいという青写真は存在しない。

 それでも、大不況期と同様、パーパス(存在意義)を追求する人間的なリーダーシップの原則(たとえば、社員と顧客を最優先にすること、利益を目標ではなく結果と位置づけることなど)は、今回も有益かもしれない。

 2019年8月、米国の主要企業で構成する財界団体のビジネス・ラウンドテーブル(BR)が「企業の目的に関する声明」を発表した。

 私の後任としてベスト・バイのCEOを務めているコーリー・バリーを含む181人のCEOたちがこの声明に署名し、顧客、社員、納入業者、地域コミュニティ、株主など、すべてのステークホルダーの利益のためにリーダーシップを振るうことを誓った。これは、資本主義経済の現状と、それが社会に及ぼしている影響を受けての動きだった。

 いま、この誓いの真価が問われている。現在の状況下で最も重視されるべきなのは、パーパスだ。リーダーは、昨夏の声明での言葉が口先だけではないと、実証する行動を取れるのか。

 私が意見を交わしたビジネスリーダーたちは、パーパス・ドリブンを徹底し、人間を大切にする姿勢を鮮明にしており、いまこそ人々の力になるためにリーダーシップを振るうべきだと考えていた。そうした考えの下で、チームのメンバーと力を合わせて正しい行動を取ろうとしている。

 第二次世界大戦時に英国の首相を務めたウィンストン・チャーチルの表現を借りれば、この危機の日々を「私たちの最良の日々」とのちに言われるような時期に変えられる可能性はある。

 私が話をしたリーダーたちはこの点を認識していて、その挑戦に臨もうとしている。どのリーダーに関しても、私はその人たちの共感の精神に心打たれた。

 いま、私たちが途方もなく過酷な日々を送っていることは、間違いない。しかし、正しいことをしたいと考えて、懸命にそのような行動を取る偉大なリーダーたちもいる。この危機の中で、ビジネスは社会で好ましい役割を果たせるのだ。

 そうした好ましい行動はまず、出張の制限、リモートワークの奨励と支援、イベントの中止などについて、社員に向けて明確で一貫性と透明性のあるコミュニケーションを行うことから始まった。「我が社は、このような対応を行います。その理由はこうです」とはっきり伝えているリーダーがいる。

 病気の社員や、子どもの学校が休校になった社員に有給休暇を提供する企業も増えている。国や企業は、有給の病気休暇の導入をもっと推し進めてほしいものだ。体調がすぐれない人が無理して出勤せずに済むようにするためには、このような制度が必要なのだ。

 ベスト・バイでは、昨年導入したばかりの託児サービス対応体制を活用し始めた。今回の危機により緊急に託児サービスが必要になった社員向けに、(それが許される場合は)安価なシッターサービスや託児所サービスを提供している。また、不安感などにさいなまれている社員のために、メンタルヘルス関連の支援も提供することにした。