ケーススタディ(1)
「やることリスト」を編集して自分を寛大な目で見る

 米国ミシガン州アナーバーを拠点とするスタートアップ、デイスマート・ソフトウエア(DaySmart Software)のチーフマーケティングオフィサー、スティーブ・マーティンは、やることリストにまつわる罪悪感について語るとき、よく自分のパーソナルトレーナーの言葉を引用する。「ベストを尽くし、あとは忘れろ」

 的確な助言だが、実践するのは必ずしも容易ではないと、スティーブは認める。「1日の終わりに、果たして今日、自分はベストを尽くしたと言えるだろうかと、毎日のように悩んでいた時期があった」とスティーブは回想する。

「毎朝、やる気満々でスタートする。高い価値のあるタスクを詰め込んだ、長いリストを書き出すことから1日を始めるんだ。だがいつも、廊下での立ち話や顧客の危機対応、とめどなく届くメールや書類に追われて脱線してしまう」

 PCの電源を落とし、帰り支度をしながら、終えられなかったことすべてに対して罪悪感をいつも覚えていたと、キャリアの大半をスタートアップで過ごしてきたスティーブは語る。「1日の終わりの無力感、と名付けていたんだ」

 彼は自分の心の健康のために、別のアプローチが必要だとわかっていた。そこでまず、「根本原因の分析」を行い、何が起きているのかを突き止めようとした。

「本当の問題について詳細に分析する必要があった」と、彼は当時を振り返る。「やる必要のあることが終わらなかった理由は何なのか。自分の期待が妥当でなかったのか。自分で自分が失敗するように仕向けているのだろうか」

 彼はこの内省期間中に、「やることリスト」が長すぎることに気づいた。「単にたくさん詰め込みすぎていた。誰にもすべてなどできるはずがなかった」と彼は語る。

 そこで彼は、いくつかの変更を施した。20項目あった「やることリスト」の代わりに、いまでは6から7項目のリストを書き出している。また、最低でも毎日1時間を、最も重要なタスクに取り組むのに使うことを忘れないようにした。

 次いで、リストをすべてこなせないのではないかという恐れに打ち勝つメカニズムを考案した。「私は自分が、実際よりも事が重大だと思いがちだという傾向に気づいた」と彼は述べる。

「1日の目標を全部こなせなかったことに対して罪悪感を抱くのは仕方ないとして、それがいまどんなに『重要』に見えたとしても、1ヵ月先、1年先には、きっとそれほど重要ではなくなっているという現実を受け入れるようにした」

 最後に、スティーブは自分を許すことにした。「やることリスト」には常に終えられない項目があるだろう。「たぶんベストを尽くすだけでは足りない。私自身の能力や努力不足でできないのではなく、仕事量がいまのリソースの許容量を超えているからできないのだ」と彼は語る。「全部やることは絶対にできない」

「だから結局、私のトレーナーが正しいのです」