●データの収集と拡散が重要である

 イタリアは、データに関して2つの問題を抱えていたようだ。感染拡大の初期段階には、データの不足が問題だった。最初の頃、気づかないうちにウイルスが広まってしまったのは、疫学的な能力が足りず、一部の病院で特異な感染症患者が増加していることをしっかりデータに残せなかったことが一因だったのかもしれない

 一方、最近は、データの精度が問題を生んでいるようだ。イタリア政府は新型コロナウイルス関連のデータをウェブサイトで頻繁に更新しているが、この感染症による死亡率には、イタリアとほかの国々の間で、そしてイタリア国内の地域間で大きな違いがある。その原因(の少なくとも一端)は検査に対する姿勢の違いにあるのではないかと、一部の論者は指摘している

 そのような状況は、感染症に対処する妨げになる。国家間や地域間の比較を正確に行えなければ、資源を適切に割り振ったり、どの国や地域でどのアプローチが成功しているかを明らかにしたりすることが難しい。たとえば、感染者の追跡を困難にしている要因が何なのかも見えづらい。

 できれば、感染の拡大状況とウイルスの性質に関するデータは、地域や国を超えて、可能な限り標準化すべきだ。そして、マクロレベル(=国単位)とミクロレベル(=病院単位)の状況を追跡する必要がある。

 ミクロレベルのデータの必要性は、どんなに強調しても足りない。医療の質については、国や州などのマクロなレベルで論じられることが多いが、しばしば指摘されるように、医療機関の提供するサービスの質と量、そしてマネジメント能力はまちまちだ。

 同じ州や地域内でも、医療機関による違いはきわめて大きい。そうした違いをよく認識したうえで、限りある資源を計画的に割り振るべきだ。政策当局者や医療従事者は、良質なデータを適切に分析できてはじめて、どのアプローチが有効で、どのアプローチが有効でないのか、妥当な推論を導き出せる。