●部分的な対策を避けるべき

 イタリアの経験からもう1つ引き出せる教訓は、部分的な対策ではなく、体系的なアプローチを採用すべきだということだ。イタリア政府は新型コロナウイルス感染症に対処するために、いくつもの命令を相次いで発し、封鎖区域(「レッドゾーン」)内の行動制限を次第に強化していき、しまいには制限を国全体に拡大した。

 通常時であれば、このアプローチは慎重な姿勢と見なされたかもしれない。賢明な対応として評価された可能性すらある。しかし、今回はそれが裏目に出た。

 理由は2つある。第1に、これは、感染が指数関数的なペースで拡大する状況に適した方法ではなかった。ある時点での「現状」は、数日後にはまったく変っている場合もあった。その結果、段階的なアプローチでは感染拡大の先手を打てず、対応が遅れてしまった。

 第2に、部分的な対策を取ったことで、意図せずしてウイルスの拡散を加速させた可能性もある。ある地域だけを封鎖し、それ以外の地域を封鎖しないという決定は、その典型だ。

 北イタリアの封鎖が発表されると、南イタリアへの人の移動が大々的に起きた。これにより、それまで感染が見られなかった地域にまで感染が拡大したことは間違いない。

 いまでは多くの論者が指摘していることだが、この一件から明らかなように、一貫した措置を同時に実行することが重要だ。中国韓国の経験も、それを裏づけている。

 中国や韓国の対応が話題になるときは、大々的な検査の実施など、それぞれのアプローチの中の個別の要素ばかりが注目されがちだ。しかし、これらの国の対策がうまくいった本当の理由は、さまざまな措置を同時に行ったことにある。

 たとえば、大々的な検査が効果を持つためには、徹底した接触者追跡と組み合わせて行う必要がある。そして、接触者追跡が効果を発揮するためには、質の高いコミュニケーションシステムを確立し、感染している可能性のある人の立ち寄り先などの情報を収集・拡散させなくてはならない。

 いくつもの措置を同時に実行することの重要性は、医療システムの整備についても言える。

 病院内では、大掛かりな組織再編が不可欠だ。たとえば、新型コロナウイルス感染症と、それ以外の病気の治療の流れを区別しなくてはならない。また、個々の患者の治療に重点を置くのではなく、地域コミュニティ単位の防疫対策に移行することも、きわめて重要だ。その際は、自宅療養を特に重んじる必要がある。

 このような調整は、いま米国の医療システムで切実に求められているものだ。