リモートワークでよく持ち上がる問題

 マネジャーはまず、リモートワーク特有の難しい問題を知っておくべきだ。それを理解せず、問題を放置すれば、成績良好だったメンバーの成果とエンゲージメントも落ち込みかねない。事前の準備や研修なしにリモートワークが開始されれば、とりわけそのような事態に陥りやすい。

 リモートワークにつきものの問題としては、以下のようなものがある。

 ●対面による監督の欠如

 対面での関わり合いがなくなることへの懸念は、マネジャーとメンバーの双方から、しばしば聞こえてくる。マネジャーは、部下がオフィス勤務のときほど真面目に働かなくなったり、仕事の効率が低下したりするのではないかと心配する(もっとも、研究によると、少なくとも一部の職種ではむしろ効率が高まるとわかっているのだが)。

 一方、メンバーの中には、上司によるサポートがなくなったり、上司とコミュニケーションを取りにくくなったりした状況に、うまく対処できない人もいる。離れた場所にいるマネジャーが自分たちのニーズを理解せず、業務遂行の支援をしてくれないと感じるメンバーもいる。

 ●情報へのアクセスの欠如

 リモートワークを始めたばかりの人がよく驚くのは、同僚から情報を得るために、多くの時間と労力が必要なことだ。自宅で仕事をしていると、同僚にごく簡単な質問をすることすら、途方もない難事業に思えるときがある。

 このような状況は、業務上の課題を遂行するうえでの障害になるだけでなく、リモートワーカー同士の人間関係にも悪影響を及ぼす。研究によると、同僚同士の「相互理解」が乏しくなり、難しい状況に置かれているときに、同僚の言動を好意的に解釈しようという発想が弱まるのだ。

 たとえば、同僚が辛い一日を過ごしたと知っていれば、その人から届いたメールの文面が不愛想なものだったとしても、事情を察してあげられる。しかし、顔を合わせずに働いている同僚からそのようなメールが送られてくれば、相手の置かれた状況が理解できていないため、気分を害したり、少なくともその人物のプロ意識を疑ったりしかねない。

 ●孤立

 孤独感は、リモートワーカーがとりわけよく抱く不満の一つだ。オフィスでは同僚同士が雑談を交わしたりすることができるが、リモートワークではそのような機会がない。

 短期的には、社交的な人ほど孤立感に苦しむケースが多いようだ(リモートワーク環境で同僚とつながる機会が用意されていない場合は、特にその傾向が強い)。しかし、長期的に見れば、あらゆるタイプの人が組織への帰属意識を以前ほど感じられなくなる可能性がある。退職を決意する人も増えかねない。

 ●集中力の維持

 ニュース記事や企業のウェブサイトなどでよく見かけるリモートワークのイメージ写真には、親がソファやリビングルームの床に座り、幼い子どもを抱きながら、ノートPCに向かっている様子を描いたものが多い。

 実際には、このような環境はリモートワークに理想的とはお世辞にも言えない。私たちは多くの場合、リモートワークを導入する前に、社員が家に専用の仕事スペースを確保し、子どもの世話を誰かに任せられる体制を確保するよう、企業に助言している。

 しかし、今回のように突然リモートワークに移行する場合は、理想的とは言い難い環境で在宅勤務をせざるをえないケースが少なくない。ましてや、学校や保育園が休校・休園になれば、子どもの世話の負担が想定以上に重くのしかかってくる。

 家庭の問題は、平常時でもリモートワークの妨げになることがある。事前の準備なしに在宅勤務を開始する場合は、そのような問題がいっそう大きくなると、マネジャーは心得ておこう。