能力と謙虚さと誠実さを備える有能なリーダーは、メンバーに強いエンゲージメントを抱かせ、生産性を高める。一方、傲慢さとカリスマ性だけで昇進した無能なリーダーは、会社全体に害悪をまき散らし、チームを不安に陥れる。組織にとって有害な人物をリーダーにしないために、どうすればよいのだろうか。


 劣悪な企業文化に毒されて、潜在能力通りの業績を上げられず、しまいに破綻する企業は、たいていリーダーシップ・チームの質に問題がある。

 有能なリーダーはメンバーに強い信頼とエンゲージメントを抱かせることにより、高い生産性を発揮させるが、無能なリーダーの下で働く人たちは不安と疎外感を味わわずにいられない。そうした人たちは非生産的な行動パターンに陥り、会社全体に害悪をまき散らす。研究によると、有害な社員を生まないことの経済的な恩恵は、成績優秀なスター社員を雇っておくことの2倍以上に上るという。

 メンバーのエンゲージメントが高まらず、転職や独立への漠然とした憧れを抱く人が多くなる最大の要因は、リーダーが無能なことだ。

 7年前、私がはじめてこの指摘をしたとき、「無能」とは具体的にどのような状態を意味するのか、特に「無能なリーダー」とはどのような人物なのかと思った人が多かったようだ。それを定義するのは難しくない。リーダーが部下やフォロワー、組織に深刻な悪影響を及ぼす場合、そのリーダーは無能と見なせる。

 無能なリーダーの最大の特徴は、傲慢なことだ。一般的なイメージに反して、世のほとんどの人は自信過小ではなく、自信過剰の状態にある。また、リーダーが大きな自信を持っているほうが部下やフォロワーにとって好ましいという、よくある見方も間違っている。

 大きな自信(自分のことをどのくらい優秀だと思っているか)を持っていることが好ましい効果を持つのは、主としてそれが本人の能力(その人が実際にどのくらい優秀か)を伴っている場合だ。ところが、膨大な研究から明らかなように、何かが本当に苦手な人も、そのことが本当に得意な人と同じくらい自分のスキルを高く評価する傾向がある。その最大の原因は、自己認識の欠如だ。

 高い地位に就いている人たちが、自分の能力を正しく自己評価できているとは限らない。では、リーダーが無能であることを見抜き、その弊害をやわらげる役割は、誰が担うべきなのか。