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専門分野での成功体験を活かして社会問題の解決に取り組み始めると、自分の無力さを痛感させられることがある。社会変革の実現は、自分一人の力だけでは不可能だ。組織や地域、セクターの垣根を超えて、多くの支持を集められるリーダーに変わる必要がある。本稿では、ネットワークづくりとコラボレーションを活かして社会を変えるための6つの教訓を紹介する。


 特定の分野で成功した人が大きな社会問題の解決に取り組もうとすると、みずからの無力を思い知らされて途方に暮れることがある。しかし、ネットワークづくりとコラボレーションのスキルを活かせば、イノベーションを成功させ、社会を根本から変革できる場合もある。

 本稿では、3つの事例を通じて、変革への支持を集めるために有益な6つの教訓を紹介したい。

 ●現場に足を運ぶ

 現場を訪ねることの意義は大きい。問題を自分の目で直接見ることができるし、そこから新しい可能性や人間関係が生まれる場合もある。ワシントンで成功を収めていた弁護士のメアリー・ルイーズとブルース・コーエンの夫妻は、これを実践することによりイノベーションへの一歩を踏み出した。

 夫妻は以前からシリア難民危機に関心を寄せていたが、漠然とした関心が強い関心に変わったのは、難民支援活動の資金集めパーティに出席したことがきっかけだった。

 ユニセフ(国連児童基金)の親善大使を務める女優のティア・レオーニが、難民キャンプを訪問したときの経験を報告した。レオーニはその訪問時に、ある事実を知って衝撃を受けた。難民たちの多くは、それまでは祖国でプロフェッショナルとして職業上の成功を収めていた人だったのだ。

 ところが、就労年齢の難民約1200万人のうち、旧来の方法により新天地で新しい職に就けた人は1%に満たなかった。これは人的資源の甚だしい浪費と言うほかない。

 ルイーズとコーエンは、状況を自分の目で見たいと考えた。2人はヨルダンとレバノンの難民キャンプを訪ねて、難民たちと話をした。

 その経験を経て、思いついたアイデアがあった。配車サービスのウーバーと似たような仕組みを用いて、さまざまな能力を持った難民たちと、難民の受け入れに好意的な国における求人を結びつけたいと考えたのだ。こうして、「タレント・ビヨンド・バウンダリーズ(国境を越えた人材)」の活動が生まれた。

 2人は難民キャンプだけでなく、さまざまな未知の世界に足を踏み入れた。新しい活動に向けて同志を増やして連携体制を築くために、数え切れないほどの国際会議に出席したり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や非営利団体、企業の人事部門など、幅広い分野の組織から協力と提案を引き出したりした。

 リーダーは、ふだん行かない場所に顔を出すことにより、新しい可能性とパートナーを獲得できるのである。