cintascotch/Getty Images

自制心、自己認識力、創造的な問題解決能力……現代のビジネスパーソンに求められるスキルを挙げ始めたら、きりがない。では、チームメンバーにこのようなスキルを身につけさせるに、何ができるのか。筆者は本を読むこと、特にノンフィクションではなく小説を読むことを推奨する。本稿では、優れた文学作品を通して心のスキルを養う方法を紹介する。


 経営者が従業員に求める最も貴重なスキルは、評価や定量化はもちろんのこと、定義することさえ難しい場合が多い。すなわち、自制心や自己認識力、創造的な問題解決能力、共感力、ラーニングアジリティ(学習機敏性)、順応性、柔軟性、前向きな姿勢、理性的に判断する能力、寛容さ、親切心などだ。

 未来の従業員がこのようなスキルを持っているかどうか、どうすればわかるだろうか。そして、いまの自分のチームにこのようなスキルが欠けている場合、どう教えればいいだろうか。

 最近の神経科学の研究によると、その答えは図書館で見つかるという。文芸小説を読むことは、人々が共感力心の理論クリティカル・シンキングを養うのに役立つというのである。

 我々は本を読むときに、いわば認識のために必要な筋肉に磨きをかけ、強化している。そのような筋肉はEQ(心の知能指数)の根本となる。言い換えれば、読書という行動そのものが適切に行われると、組織が採用や長期雇用を望むような、従業員の品性や習性、特徴を発達させるのに役立つのである。

 トップクラスのビジネスリーダーたちは長年、読書のメリットを唱えてきた。バークシャー・ハサウエィCEOのウォーレン・バフェットは、ほぼ終日読書して過ごし、1日に500ページ読むことを勧めている。起業家のマーク・キューバンは、1日に3時間以上読書しているという。スペースXのCEOイーロン・マスクは、ロケットの製造法を本で学んだと語っている。

 ただし、ビジネス界のビジョナリーたちが読書のメリットを称える際、ほぼ常に、ノンフィクションを推薦する。バフェットは2019年に19冊の本を推薦したが、その中にはフィクションが1冊もなかった。過去数年間にビル・ゲイツが推薦した94冊の本のうち、フィクションはたった9冊である。

 読書となると、知識を得るための行為とつい考えがちだ。しかし研究によれば、フィクションはノンフィクションよりもはるかに重要な恩恵をもたらす。たとえば、フィクションを読むと社会に対してより鋭敏になり、他人の動機を理解する能力が磨かれる。

 たしかに、ノンフィクションを読むことは知識を得るのに役立つが、EQの開発という、とらえどころのない目標の達成には、あまり役に立たない。